雪の夜
投稿者:youchi (13)
亡くなった祖母は霊を見たり感じたりする人でした。これは私が幼い頃から何度も聞いた祖母の体験談です。
北海道で生まれ育った祖母は、冬が大嫌いでした。雪が何日も降り続き、閉ざされた家の中で過ごすことが何より苦痛だったそうです。
祖母には年の離れた兄がおり、祖母が小学生の頃に結婚して子供が産まれたそうなのですが、お嫁さんは産後のひだちが悪く、生まれたばかりの赤ちゃんを残して亡くなったそうです。
祖母の兄は冬の間出稼ぎに行かなければならなかったので、その赤ちゃんは祖母の実家で面倒をみていたそうです。
その夜も吹雪いており、皆早くに床に入ったそうです。祖母は赤ちゃんがむずかる声で目を覚ましましたが、家族は眠ったままです。ふと、遠くから廊下を歩いてくる足音に気づきました。
ギシ ギシ ギシ
ゆっくりと近づいてくる足音に耳をすませていると、障子を開ける音もしないのに、足音はとなりの部屋に入ってきました。そして、部屋の中を歩き回っています。
ミシ ミシ ミシ…
足音は襖の向こう、祖母の頭の上でピタッと止まったそうです。あまりの恐怖に布団から出られずにいると、足音は次第に遠ざかり、廊下へと移動して行きました。祖母がホッとしたのも束の間、
ドン!バタン!
誰かが勝手口の戸を思い切り開けて外へ出たような物凄い音がしたそうです。
「泥棒だ!」
家族も目を覚まし、勝手口へ行ってみると、雪が降り積もって戸は開かなかったそうです。しかし勝手口のたたきには、はっきりと裸足の足跡が残っていたそうです。
祖母はさっき聞いた足音のことを話すと、祖母の母は、
「私も聞いていたよ。A子(兄嫁の名前)さんだよ。T夫(赤ちゃんの名前)のことが心配で見に来たんだ」
祖母も何故かその足音は兄嫁だと思ったそうです。
生んだばかりの我が子を残してこの世を去った兄嫁は、どんなに無念だっただろうと、祖母はこの話をするとき、いつも涙を流していました。
母親が子供を思う気持ちは、この世からいなくなっても変わることはないのだと、この話を思い出すたびに胸が痛くなります。
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