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不思議体験

もりのくまおさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

一枚足りない
短編 2022/08/17 03:17 2,784view

 さて、適当に持ち込み許可を得ている菓子とつまみを食べ、民宿で出された
ビールを飲み、風呂に入って着替えた面々はマージャン会場の部屋に入って、
いよいよマージャン大会が始まった。夜の8時。今から12時間の戦いだ。

 会場をセッティングし、ジャン牌をコタツの上に出す。さあ始めようという瞬間、

あれ?一個牌がない。ことに気が付いた。
ジャン牌を出してぶちまける寸前まで、全員がすべての牌が揃っていることは
見ていると思う。一つ分の空間があれば、その場で気づいているはずだ。
それから約30分、消えた牌の捜索が始まった。消えたのは「東」の牌。

全員わざわざこんなところまでマージャンだけしに来ている変人だ。隠すはずはない。
真剣に探すが、結局見つからず、「春」牌を代用して始めることとなった。

 夜中の3時を越えるころには、睡魔で全員口数も徐々に少なくなってくる。
何回目かの半荘が終わったタイミングで、全員がトイレに立った。廊下は
真っ暗になっている。木造のがらんとした廊下ではちょっと一人ではトイレに
行きにくい。いわゆる連れションってやつだ。

全員が部屋に帰ってきて、ふすまを開けようとした瞬間、

コロン

という音がした。何かが即席の雀卓の上に落ちた音だ。全員が入り口で完全に
フリーズした。みんな何が部屋の中で起こったかを、瞬間的に理解している
ようだった。

ふすまを開けられなかった。絶対無理だと思った。

さすが先輩、怒ったような顔をしてふすまを勢いよく開けた。

そうか。消えた「東」の牌は天井にあったんだ。下ばかり探してたら、そりゃ
見つからないわね。

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