体験者 佐々木 圭 (仮名)
2003年 T県 某所
当時佐々木さんは格安の居抜き物件を買い取り、セルビデオショップを経営していた。
深夜1時頃、客がいなかったので詰所のモニターで店内の様子を見ながら休憩していた。
モニターに映る店の入口の自動ドアが開く。こんな時間に客が来るのは珍しい。しかも女性だ。赤いトレンチコートを着ている。
女性はへっぴり腰で両手で周りを探りながらフラフラ歩いてる。まるで目が見えていないかのようだった。
不審に思った佐々木さんは店頭へ様子を見に行った。
誰もいない……
詰所から店頭まで、10秒もかかっていないはず。首を傾げながら詰所に戻る。
再びモニターを見ると確かに女が映っている。詰所の方にフラフラと近づいて来る。
ドアノブがガリャリと音を立て、詰所のドアが開けられた。
赤いコートの女、頭がない。首から上がスパッと消えている。
女は手探りで壁を伝い、佐々木さんの方へ近づいて来る。何かを掴もうとする女の骨ばった手が乱暴に空をかく。
佐々木さんは腰を抜かし、這うように店の外まで逃げた。車へ駆け込み、警察へ通報した。すぐにパトカーが1台駆けつけた。
ありのまま事情を話した。意外にも警官はすんなりと店内を見回り、異常が無いことを確認してくれた。
『 また何かあればご連絡下さい』
佐々木さんは事情を聞いた警察が「またか」という顔をした事や、この物件の安さで、何となく察しがついた。
後日常連客に聞いた話によると20年以上前に、この店の前でトラックに引かれた人がいたらしい。あまりの衝撃で、首が道路の外まで飛んだ。
その首が落ちた場所が、どうもこの建物の敷地だったらしい。
現在その場所は、駐車場になっている。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。