会いに来てくれた祖母
投稿者:pams (61)
短編
2022/08/15
16:50
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お盆という風習は先祖が返ってくる日だと言われています。
先祖のお墓を綺麗に掃除をし、好きだった食べ物や飲み物をお供えして迎い入れ、親族で会食をします。
そしてお墓参りをして送り火を焚く。
日本古来からの過ごし方です。
私は何年も祖母の家に行くことができていません。
しかし去年の夏、不思議な感覚を体験したのです。
去年の今頃、「今年のお盆もおばあちゃんちに行けそうにないな」と思っていた私。
案の定あっという間にお盆が来てしまいました。
お盆も仕事でバタバタしていて、余裕がありませんでした。
その日、帰宅途中に信号を待っていると横断歩道の向こう側に手押し車を押しているお婆さんが見えました。
青に変わり私は歩き出します。
お婆さんも少しずつ少しずつ歩いて来ます。
横断歩道ですれ違う直前、お婆さんの顔を見てハッとしました。
5年以上前に亡くなった父方のおばあちゃんにあまりにもそっくりだったのです。
そのお婆さんは私を優しい目でじっと見つめ、口元は笑っていました。
一時、時間が止まったかのように感じました。
我に返りとっさに目を逸らした私は、そのままズンズンと歩いて信号が青のうちに渡り切りました。
その時、ふと「お婆さん渡れたかな」と思い後ろを振り向くとその姿はどこにもありませんでした。
一体どこに消えてしまったのかと思い辺りを見回しましたが、「もしかして会いに来てくれたのかも…」と感じたのでした。
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