ヒッチハイクの女性
投稿者:カンニバル (7)
雨に打たれたせいか血色が悪い顔をしています。
このまま放置するわけにはいかないので駅まで送る事にしました。
後部座席に乗せて車を走らせます。
話しかけても下を向いて頷くだけで声を発しません。
少し気味悪い感じがしたので急いで駅のロータリーで下ろしてあげました。
ミラーで確認すると女性の姿が消えていました。
恐らく駅の改札へ向かったのでしょう。
途中、パーキングエリアで休憩をした時に、ふと後部座席が気になったのでドアを開けて覗き込むとびっしょり濡れています。
手持ちの新聞をたっぷり敷いて窓を少し開けて乾かしながら帰る事にしました。
2時間ほどして自宅に着いたので釣り道具を下ろします。
そして後部座席をチェックするとまだびっしょり濡れています。
あれだけ風を当てていたのに全く乾いていないと言う事はありえません。
ドライヤーを持ち込んで熱風を掛けても全く乾かないのです。
それどころか、シートから水が湧き出る様に出てくるのです。
あれは間違いなく幽霊だったと女性を乗せた事を後悔しました。
友人に急いで電話をしたのですが笑って話を信じてくれません。
「明日、会社の帰りに寄ってやるよ」と冷たい一言を吐き捨てて切られてしまいました。
とりあえず、シャワーを浴びたのですが水の音を聞くだけで恐怖を感じます。
髪を洗って目を開けた瞬間、目の前にあの女性が立っていたのです。
青白い顔を上げてにっこり微笑んだのです。
これはほんの一瞬の出来事で、瞬きする程の時間でした。
大声を出そうとした瞬間には女性の姿が消えていたのです。
色んな事を想像し過ぎて疲れていると自分に言い聞かせて夕食も食べずにベッドへ入りました。
1時間ほど眠ったのでしょうか。
蒸し暑さを感じて目が覚めるとびっしょり汗を掻いていました。
スマホの明かりでなんとかエアコンのスイッチを入れた時の事です。
風と一緒にミストのような水滴が飛んできたのです。
慌てて電気を点けようとベッドのスイッチに手を伸ばすとびっしょり濡れていたのです。
頭の中は完全にパニック状態です。
「あの時…声を掛けてくれてありがとう…」
良い終わり方で良かったわ~
月に1度釣りに行けるこの主人公は精神的、経済的にも余裕があって羨ましいと思ってしまった。
月いちの釣りのついでに供養するなんて素敵
優しくて、勇気のある方に会えて良かったです。