【ほん怖】真夜中に鳴り響くナースコール
投稿者:邪神 白猫 (7)
「……?」
呟くように言ったその言葉の意味がわからなくて吉田さんを見つめていると、そんな私の様子に気付いた吉田さんは困ったように微笑んだ。
「松居さんね、夜中に一人でトイレに行くとたまに部屋を間違えちゃうのよ」
「そうなんですか……。でも、どこにいるのか探さないとですね」
「それなら大丈夫。きっとあそこだから」
そう言って歩き出した吉田さんの背中を追いかけると、右隣りにある203号室の前で足を止めた吉田さん。
「……ほら、いた」
吉田さんの指先を辿って室内を覗いてみると、確かにそこには松居さんの姿があった。
ベット上で、まるで何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っている松居さん。そんな松居さんの姿を眺めながら、吉田さんは呆れたような笑顔を見せた。
「全く、松居さんたら……」
「……まぁ、どの部屋も似てますからね」
午後10時を回ると消灯して廊下も薄暗くなる為、よく似た作りの病室はどこも同じに見えなくもない。せっかちな松居さんのことだから、きっとあまり確認することもなく眠りについたのだろう。
そう思うと、何だか可笑しくて私はクスリと笑い声を漏らした。
「気持ち良く寝てるとこ申し訳ないけど、起こしましょうか」
「はい」
顔を見合わせてクスリと微笑んだ私達は、松居さんを元の病室へと戻すとナースステーションへと戻ってきた。
「──じゃあ、先に仮眠取らせてもらうわね」
「あっ、はい」
「何かあったら遠慮なく起こしに来ていいからね」
「はい、わかりました」
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