(何度見ても不気味だな……)
陰湿な雰囲気を漂わせているトンネルの前で足を止めると、一度全体を見上げてからその視線をトンネルの中へと移す。
こうして改めて見てみると、トンネル全体の空気は酷く重苦しく、異様な雰囲気を放っている。
この3年、全国各地で様々な心霊スポットを巡ってはきたが、このトンネルはその中でも群を抜いておどろおどろしく、その空気に圧倒された俺は思わずゴクリと喉を鳴らした。
と、その時──。トンネルの中で何かが動いたような気がして、俺は瞳を細めると目を凝らした。
「──っ!?」
声にならない悲鳴を喉の奥へと飲み込んだ俺は、硬直した身体のまま目の前の”ソレ”を見つめた。暗がりで見えにくいとはいえ、確かに目の前に見えるのは全身血だらけの女の人の姿。
カタカタと震え始めた身体から冷んやりとした汗が滲み出る。
自慢じゃないが、俺は未だかつて一度も幽霊というものの存在に遭遇したこともなければ、怖いとすら思ったこともなかった。
けれど、そんな俺でも直感的に感じたのだ。あれは、関わってはいけないと──。
(……っ、逃げなきゃ……っ!)
そうは思うものの、まるで金縛りにでもあったかのようにピクリとも動かない俺の身体。動かない身体をガタガタと震えさせながら、ギュッと固く瞼を閉じた俺は心の中で懸命に祈った。
(頼む……っ、頼む……! 早く動いてくれっ……!)
──────
────
「……っ、うあぁぁあーー!!!」
勢いよく飛び起きた俺は、息も絶え絶えに辺りを見回した。
「……夢……、か……っ」























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