中学生の頃、野外活動の一環のため学年全員で某県の山小屋に宿泊していた。昔からその山小屋や周辺の山には幽霊が出るだの不思議な現象が起きると噂されていたが皆面白半分で楽しんでいた。
野外活動の最終日、最後の山登りを終え「疲れたね」「まだまだ登れる」などと軽口を叩きあっていた。休憩していた場所は山の麓とはいえ崖のように切り立った岩や細く朽ちた吊り橋などがあり中学生の有り余る好奇心を刺激するには十分だった。
ふと視線の端でなにか動いたと思い辺りを見回すと大きな岩の上に自他ともに認める学年一のお調子者の姿があった。いつもアホなことばかりしてみんなに呆れられたり笑わせたりしているそいつがまた目立つところにいるのを見て同じ班の奴と「おーい!何してんだよ!ずっこけて怪我すんぞー!」とからかい半分心配半分で声をかけた。いつもならここで「オレそんなヘマしねーし!じゃ、ここで1発芸!」とか返ってくるのだがその時は無言のまま真っ直ぐ前を見つけてフラフラと歩いていく。さすがに様子が変だと思い皆で止まれ、落ちるぞと声をかけるも無視。
とうとう岩の上から落ちてしまい周りからは悲鳴や野次。痛い痛い騒ぐそいつに駆け寄り声をかけたのになんで止まらなかったと聞くとそいつは不思議そうに言った。
「え?みんなこっち来いって言ってたじゃん」
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