「助けて」という声
投稿者:偽美 (28)
私が小学生のころ、祖母の家に遊びに行ったときのことです。
祖母はもう亡くなっていて、父と母と私の三人で泊まりがけで行きました。
田舎だったので夜は真っ暗になり、私は怖くてトイレにも行けませんでした。
そしてその夜…………恐ろしい出来事が起こったのです。
深夜二時頃だったでしょうか? 私はふっと目が覚めてしまいました。
その日は妙に寝苦しく、暑かったような気がします。
目を開けて暗闇を見つめているうちに少しずつ眠くなり、再び眠りに落ちていきました。それからどのくらい時間が経ったのかわかりませんが、突然誰かの声を聞いたような気がして目が覚めたのです。
「うーん」
とか、
「あぁ」
という声のような音のようなものを耳元で聞きました。
それは低い声でしたが男の人のものではなく女の人のように思えました。
はっきりと誰なのかはわからないけれど、確かに聞いたことのない女の人の声です。それが聞こえたあとすぐにまた眠りにつきました。しかし今度は夢の中で女の声を聞きました。
「助けて……」
という悲痛な叫びです。
夢の中でも同じように女の人の声が聞こえるだけでした。
ただひとつ違ったのは、
「助けて」
というセリフだけだったこと。
目が覚めるとまだ真夜中で、父も母もぐっすり眠っているようでした。
私は布団から起き上がるととても怖かったのですが我慢できず部屋を出てトイレに行きました。
用を済ませてから部屋に戻ろうとしたとき、廊下の奥にある仏間が目に入りました。電気が点いているように見えましたが気のせいでしょう。私はそのまま自分の部屋の前まで戻り、ドアノブに手をかけようとしたところで動きを止めました。
そういえばあの時、
「助けて」
という声を聞いた場所ってこの辺りじゃなかったかな……と思ったんですね。
だからなんとなく気になって、ちょっとだけ中の様子を覗いてみようと思いました。
でも怖いもの見たさというか好奇心には勝てず、そろりそろりと襖に近づき隙間から覗き込みました。するとそこには――
誰もいませんでした。
でも確かに何かがいた気配はあるんですよ。
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