スーパーでお金を拾ってくれた男
投稿者:偽美 (28)
今から二年ほど前の話になりますが、私は自宅近くのスーパーに買い物に行きました。
買い物を済ませ、レジで会計をしてもらっている時に、財布の中を見て
「あれ?」
と思いました。
小銭入れの中に、五百円玉がないのです。
(……おかしいなあ??)
レジ袋を受け取りながら首を傾げていると、一緒に並んでいたお客さんが、
「すみません!」
と言って私に声をかけてきました。
声をかけてきたその人は、三十代半ばくらいの男性だったと思います。
彼は自分のズボンの後ろポケットに手を入れて、
「これ落ちてたんですけど……」
と言いながら、 私が落としたらしい五百円玉を差し出してくれました。
私は驚きながらも、慌てて頭を下げて礼を言いました。
「ありがとうございます!」
彼が差し出した五百円玉を受け取ろうと手を伸ばしたところ、 男性はなぜかなかなか手を離そうとしませんでした。
不思議に思って顔を上げると、男性もこちらを見ていました。
彼の表情を見た瞬間、全身の血が凍りついたような気がしました。
なぜなら、男性の目は真っ黒だったからです。
眼球がぽっかり穴のように空いているかのように、ただ黒いだけなのです。
驚いて息を飲む私に向かって、男性は言いました。
「ねえ……、この五百円どうするつもりだったの?」
「えっ……!?」
私は何と答えていいか分からず言葉を失いました。
すると男性は私の目を覗き込むようにして尋ねました。
「どうしてお金持ってないの? 今日は買わない日?」
「いや、あの……」
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。