映りこむ何か
投稿者:ぴ (414)
はっとして音の方に顔を向けると、鏡の中に人の足のようなものが見えた気がしたのです。
私はあまりにびっくりして飛び上がりました。
しかし、後ろを見たけど誰もいなくて、もう一度見返すとただの鏡で、私と仮眠室が映し出されているだけでした。私はまた首を捻りながら仮眠室を出ました。
3回目に私が見たものは「人の目」だったと思います。
その日は仕事中にコンタクトがずれてしまって、痛くて仕方なかったのです。
一緒に働く職員に、「ごめんコンタクト直してくる」とバックヤードに引っ込んで、それから仮眠室にあるあの鏡でチェックしていたのです。
私が鏡に今までにないくらいに近づいてコンタクトを直しているときでした。
急にばちっと目が合いました。私じゃない人が一瞬鏡に映って、そして消えたのです。
目が合ったと思った瞬間にぞっとしました。
鏡に目が映ったのは一瞬だけで、すぐに掻き消えました。
思わず振り向いて周りを見たけど、どこを探しても誰もいないのです。
私は怖くなってきて、すぐに仮眠室を後にしました。
それからは意識的に仮眠室を使わなくなっていき、お昼は近くのファミレスで過ごすことが増えました。
あまりに頻繁に起こる怪奇現象に映りこむ何かが自分の見間違いとは思えなくなってきて、私は職場の仮眠室にある鏡を避けるようになったのです。
だけど、私は恐怖は終わらなかったです。
だってあの仮眠室の鏡ではなく、家の鏡でも頻繁に何かが映るようになっていったからです。
髪の長い女や櫛、そして手とか足とか一瞬ですが鏡に映ってしまうのです。
いくら鈍い私でも、ここまでくるとあの鏡が異常だと気付き始めました。
そして私は思い切って、職場の人に提案してみたのです。
「あの鏡もう古いし処分してもいいですか?」と。
誰も鏡のことなんて気にしていないと私は思っていました。
だって誰一人としてあの鏡のことを話題にしたことがなかったからです。
だからすぐにOKしてくれると思ったのですが、私は先輩から「あの鏡に触らないほうがいいよ」と忠告を受けたのです。
話を聞いてみたら、みんなあの鏡のことを知っていました。
しかも私と同じく、何かが映るのを見た人も多かったです。
そしてその鏡を処分しようとした人がこれまで何人も重軽傷を負っている話をされました。
中には交通事故で命に別状はないものの寝たきりになったという人もいたらしくて、みんな怖がってあの鏡を処分できないでいるようでした。
そこでやっと、私が仮眠室を独り占めできた理由…みんなが仮眠室に近づかなかった理由が分かったのです。
話を聞いて私は怖くなりました。
家でも頻繁に起こりだした映り込む何かにも怯えてしまって、
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。