ドアを叩く正体
投稿者:七色 (4)
しかし、今の時代男でもストーカーに遭い、稀にだが殺害される世の中だ。
親父も引っ越し費用を工面してくれると言ってくれたので、俺は心の底から感謝して頭を下げたもんだ。
引っ越し費用の問題が解決すれば、後は引っ越し先を探すだけだ。
俺はできれば今住んでいる町内からは何駅か離れた方が賢明だと思い、大学やバイト先に通うのに支障ない範囲で賃貸物件を探し始めた。
物件はすぐに見つかるだろうが問題は引っ越すまでの期間をどう過ごすかだ。
「頼むよ、引っ越し先が決まる間でいいから泊まらせてくれないか?」
俺が頼れるのは大学で知り合ったこの友達だけだ。
必死に手を合わせて頼んでみれば案外すんなりと了承されたので拍子抜けだったが、持つべきものは友だと痛感する。
「お前、マジで死亡フラグ回収したな」
ただ、友達は俺の境遇を笑っていたから感謝しても尊敬はできなかったが。
家から必要な荷物を持ち出して友達の家で寝泊まりするようになって、一週間が過ぎた頃。
俺は今より二駅離れた場所で良い感じの物件を見つけて内見に行った後、気に入ったのですぐに手続きを進めた。
バイト先は一駅遠くなるが、その分大学は近くなる。
引っ越し当日、前の物件を引き払った為、今日が退去の日になる。
鍵はポストに入れておいてよいと通達されたので、最後のダンボール箱を友達がレンタルした軽自動車に詰め込んだ後に鍵を玄関ドアに付属のポストに投函し、これでおさらばだ。
時間帯は既に深夜0時を過ぎていたが、退去の日がバイトと重なったので致し方が無い。
免許の無い俺の為にわざわざ車をレンタルしてくれた友達には本当に頭が上がらない思いだ。
後は管理人が俺が退去した部屋を確認して問題なければ敷金が少し返ってくるだろうが、壁紙とかフローリングに傷が入っている為、恐らく返金は見込めないだろう。
俺はアパートを後にして友達が待機している車に戻ると、助手席に乗り込んだ。
「ごめん、待たせたわ」
「……」
俺がシートベルトを着けながら謝罪すると、友達はルームミラーを訝し気に睨みながら眉根を細めている。
「どした?」
あまりに不自然な友達の態度に言及すれば、友達は僅かに唸った後、言いにくそうに口を開く。
「……あれ、お前の知り合い?」
友達がルームミラー越しに顎で指し示した辺りを俺もミラー越しに覗いてみる。
すると、街灯が照らす電柱の影、深夜に俺の部屋のドアスコープを舐めまわしていた例の性別不明の小太りのアイツがじっとこっちを見ているじゃないか。
「うわ!アイツだよ、アイツ。ドアスコープ舐めてた奴」
「うわぁ…ガチじゃん」
しかし、車内で友達と居る安心感から、俺は深夜に遭遇した時よりは落ち着いていた。
今回はしっかりと街灯に照らされているおかげで人相まではっきりと確認できたが、どう見ても三十代から四十代くらいの小太りのおっさんにしか見えないものの、妙に女性らしい曲線美を感じさせる。
やはり、あれは女性なのか…。
答えは確かめようが無いが、その得体の知れない人物はボサボサのパンツン前髪におさげスタイルといった古風な髪型をしていて、平成初期に流行ったチェック柄の上着にロールアップしたデニムを履いている。
こわ
最後はアッー!ということでしょうか
お幸せに
同居させてもらってた時から、うっとり瞬間は何回かあったはず