魂がこもった人形
投稿者:ぴ (414)
私の親戚には、昔から酷く恐れられているおじさんがいました。
普段はとても紳士そうで穏やかに見える人なのです。
私も初めて見たときはそれに騙されて、にこにこしてとても優しそうと好感を持っていました。
ただ、それは外面がいいというだけで、一度怒らせてしまうと人が変わったように変貌する人でした。
その引き金を引いてしまうのが怖くて、親族の集まりがある度に、なんだかピリついた雰囲気が付きまとっていました。
子供ながら周りの子と比べて聡かった私は早い段階でそのおじさんの二面性に気が付きました。
急に人が変わったように奥さんを怒鳴りつける瞬間を見て、その変化が「怖い」と思ったのです。
基本子供には優しく接していたおじさんで、私の妹なんかは外面のいいおじさんに完全に騙されて懐いていました。
しかし、うちの両親は妹の馴れ馴れしい態度がいつおじさんを怒らせて鬼に変貌させないかといつもびくびくしていたように思います。
それを結構早い段階で感じ取っていた私は妹をおじさんからさりげなく引き離そうとしたことがありましたが、妹はそれはそれは懐いているようでした。
このおじさんには3年前まで娘がいたのです。
奥さんとの間に生まれた一人娘でした。私も数回見たことがありましたが、蝶よ花よと可愛がられてとても大切にされているように見えました。
奥さんがハーフだったこともあるのか、日本人離れしたまるでお人形みたいに可愛らしい子供でした。
ただ体が弱いという理由で、親戚ながらほとんど交流はなかったです。
遠くから見てもとても真っ白でふわふわの髪の毛をしており、「お人形さんみたいね」と母と話したことをよく覚えています。
その娘は3年前に、病気で息を引き取りました。10歳の誕生日を迎える前だったと聞きます。
重い白血病だったというは話を聞きました。
それからおじさんたち夫婦の仲は冷え込み、じわじわとおじさんが突然激怒するシーンが増えたと聞きます。
おじさんの癇癪はいつ起こるか分からなくて、親族ともども怯えてとても気を使っていました。
だから親戚の集まりがあると、家族みんながどんよりしてしまっていたのです。
そしてこの日、私は驚くべき言葉を耳にしました。
おじさんが私たちの両親に話があると声をかけてきて、私は妹と別室で遊んでいたのです。
そしたら隣の部屋から母の大きな声がして、「ダメです。なほを養子になんてできません!」と激しい口論が聞こえてきたのです。
突然妹が養子と聞いて頭の中は「?」だらけでした。
養子という意味もよく理解していなくて、その後涙している母が父と部屋に入ってきて驚きました。
父がなんとも言えない神妙な顔で入ってきて、隣で涙を流す母を慰めていました。
私はなんとなく嫌な予感がしたし、妹のなほをぎゅっと抱きしめてしまいました。
なほはまだ小さくて現状を全く理解していないようでした。
お人形遊びをしており、フランス人形でままごとを楽しんでいるようでした。
泣いていた母ははっとして「そのお人形どうしたの?」と妹に聞きました。
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