魂がこもった人形
投稿者:ぴ (414)
すると妹は「部屋にいたよ」と満面の笑みで言いました。
それを聞いて部屋で二人で遊んでいるように言われたときに、部屋にこんな人形なんてあったっけ?と不思議に思ったのです。
いつの間にか妹が持っていたので、気にもしていなかったのですが、そういえばいつからこの人形で遊んでいたのか首を捻りました。
父は神妙な顔で、「なほはおじさんが好きか?」と聞きました。
妹は笑顔で「うん、大好き」と頷きました。母が「駄目よ。絶対に駄目よ」と父に言っていて不穏な空気でした。
父は次に「なほはおじさん家の子になりたいか?」と聞いたのです。
それを聞いた瞬間、私の腕は一瞬にしてぶわーっと鳥肌が立ちました。
妹がおじさんの家の子になるという言葉が衝撃的だったのも理由の一つです。
しかし、鳥肌の一番の理由は父が妹にそう聞いた瞬間に、妹が抱いている人形の首が明らかに左右に揺れて起き上がったからなのです。
まるで父の言葉に反応するようにのそっと顔を上げた人形に私はぞくぞくとした鳥肌を立てたのでした。
思わず私は「動いたー」と人形を指さして驚きの声を上げました。
妹は「え?」と手元を見ましたが、みんなが注目する前にそのフランス人形は四肢の力を抜き、くたっとしました。
さっき首をあげたはずの人形が瞬く間に、ただの人形に戻っていてびっくりしました。
でも絶対に自分の目は正しいと思って、「お母さん、さっき人形が動いたの」と何度も何度も言いました。
でも家族は誰も信じてくれず、苦笑いで「見間違いよ」と言われてしまったのです。
母は妹を養子にしたいとおじさんに相談され、精神的に参っていたようでした。
娘を亡くし、傷心しているおじさんの気持ちも汲んであげようという優しい父の言葉に慰められているようでした。
私たち家族はその夜、おじさんの家で一泊しました。妹と一緒にお風呂に入り、ベッドに入りました。
妹が寝るときに人形を抱きしめて寝ようとしたので、私はそれを取り上げて、傍らの机の上に置きました。
なんとなく、動いたように見えたその人形と妹をあまり近づけたくないと思ってしまったからです。
引き離しても妹はとくに嫌がることはなく、二人で一緒に眠りにつきました。
しかし、その夜私はごそごそと布が擦れるような小さな音がして、ふと目が覚めたのでした。
何の音だと周りを見渡したけど、音の原因が分かりませんでした。
私はなんとなく気になって、電気をつけたのです。
父と母はぐっすり眠っていて起きる様子はありませんでした。
妹を確認したけどすーすーと深く眠っていて、私は安心しました。
しかし、何気なしに見渡して私は気づいてしまったのです。
傍らの机に座らせていたあの人形が忽然と姿を消していることに。
一瞬にしてひやっと体が凍り付き、思わず私はその姿を探して、ぎくりとしました。
さきほどまで私が寝ていた辺りのふとんがこんもりと盛り上がっていたのです。
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