姉の住んでいた曰く付きアパート

後日談として、姉の引っ越し後近所の人から聞いた話があります。

あのアパートはもともと、姉の引っ越しとほぼ同時に建てられた完全新築だったそうです。

立地も良く、完全新築、近所には徒歩圏内で行けるスーパーもあり、家賃も相場より少し安いぐらい。

条件が良すぎるぐらいのアパートでしたが、壁が薄いという欠点があり、度々住人同士で揉め事に発展していたそうです。

また、駐車場が狭いため、住人の友人知人が来訪した際に車を公道に停める等の問題もあり、近所からの苦情が殺到していたとのこと。

日中は車の音、住人同士での揉め事の声、来訪者や苦情通報を受けてかけつけた警察の声など、とにかく騒がしいようなアパートだったそうです。

４部屋あるアパートのうち１軒が事故物件になって以降、姉を含め全員が退去を決め、現在では完全空アパートになったそう。

近々そのアパートが解体され、また別のアパートが新築として建つ予定だと聞きましたが、住人が集まるのか不安が多いそうです。

姉は前のアパートに５年程住んでいたのですが、その間にも色々不幸事が相次いだと話していました。

引っ越してすぐ彼氏ができ、同棲の話が出たのですが、騒音に少し悩んでいた姉が相手に同棲を急かしたようになり、そこから言い合い、そして破局。

ダイエットに成功したものの、彼氏と別れたことが職場で噂になったストレスから過食に発展し、リバウンド。

その後すぐ新しい彼氏ができたものの、暴言の酷い人ですぐにお別れ。

騒音に悩まされなければ、同棲を急かすことも彼と言い合いになって別れることもなかったのにと姉は主張しています。

また、例の隣人も、最初は本当に親切な人だったそうです。

引っ越し後数年経ったあたりから電話での声がやけに聞こえるようになり。

「口座の入金はまだか？」と、詐欺まがいな会話をしているのも聞こえるようになったと姉が言います。

なぜ旦那さんが亡くなったのかは分かりませんが、その前後ぐらいからは家具をなぎ倒すような音も聞こえていたと姉が話します。

騒音で精神状態がおかしくなった住民が個人的なトラブルを起こしていたことは間違いがないようです。

ただ、姉の部屋の荒れすさみ方があまりにも奇妙だったのが今でも印象的です。

綺麗好きで掃除を絶やさない性格の姉は実家に戻る前日まできちんと掃除をしていたと言います。

１週間ほど家を出ただけで家具が倒壊し、物が散乱、足の踏み場もない状況になったのが今でも理解できません。

人が入った形跡がないということは、もともとあのアパートには長い間家を空けられないようないわくがあったのかもしれません。

姉が住んでいた時も置いたはずの場所から物が移動していることはよくあったそうです。

ポルターガイストと呼ばれる現象だったのかは定かではありませんが、それに近い現象が起きるようなアパートだったのではと思います。

騒音だけでそこまで人が精神的に狂うことは考えられません。

やはりあのアパートには目に見えない問題、そして騒音トラブルが住んだ人にしか分からないような規模で起こっていたのだと考えています。

空アパートは既に取り壊しが進み、新しいアパートは新設されず、月極駐車場に姿を変えました。

姉は現在、山の近くにある静かな団地に移り住んでから穏やかな生活を送り、元気に過ごしています。

少し距離があるため通勤には少し不便がありますが、自然が多く、騒音問題のない立地で心が落ち着くと話していました。