特攻で散った兄ちゃんへ
投稿者:みやび (3)
短編
2022/05/05
17:49
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でも僕たちは、軍神になんかなれなかった。世間に疎まれ、蔑まれ、戦争が終わっても家族を傷つけるだけの人生しか無い。
兄ちゃん、特攻は美しい死なんかじゃない。
戦争をしている時より、戦争が終わった後の方が、僕には辛い。
右脚を撃たれ、左脚も切断することとなり、チグハグな長さの両足と、火炎放射器で溶けてしまった指が、手が、僕の身体に張り付いて動かない。
僕は、クミコ姉ちゃんの仕事を想像できる。捕虜になった僕には、抵抗することなんて出来やしなかったのだから。
兄ちゃん、僕はまだ生きている。
30歳を過ぎても、変わり映えしない毎日を送っている。
僕は、長い長い時間を無作為に、戦争の後の平和の裏を考え続けている。
僕を訪ねてくる奴なんて、タケシくらいしか居なくて、犬死した兄ちゃんの話を、虫のように生きている僕と語り合ってくれている。
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何が怖いのかわからないので解説などいただけると嬉しいです。
解説頂きたいです。
傷痍軍人か…
とてもこわい。想像するだけで息が詰まるよう