電車にだけ現れる親友の好きな人
投稿者:J2 (8)
「私も先週、同じだった。」と。
彼女も先週の金曜、隣町の図書館に行こうと電車に乗った時、彼の姿を見たそうです。
私が見たのと同じ、白シャツにジーンズ姿。
後を追った彼女が終電駅まで来て見たのは向かいのホームに消えていくように落ちた彼の姿。
後を追うようにした彼女は近くにいたサラリーマンに腕を掴まれ、そして目の前をすごい勢いで通過列車が通ったそうです。
「終電って、〇〇駅?」「そう。〇〇駅。」「彼が落ちたのは2番線?」「そう2番線。」
そのまま2人とも無言になり、しばらく顔を見つめ合っていました。
「ちなみに、彼とはどこで出会ったの?」この段階でようやく彼との馴れ初めを質問しました。
彼女は小説を読み書きするのが好きで、誰でも無料で投稿できる小説サイトに作品を投稿していたそうです。
そこで声をかけてきた彼と意気投合し、連絡先を交換したそうです。
実際に会ったことは一度もなく、姿を見かけたのは電車での出来事だけだったとのこと。
小説サイトを見た私が彼女に「彼のプロフィールってどこから見るの?」と尋ね、「ここ。」と言われたリンクを開いた時。
「このページは存在しません。」の表示が出て、彼の情報を見ることはできなくなっていました。
唯一知っている彼のメールアドレスからは1日数通のメッセージが届くと話す彼女。
「まあ、もしかしたら私たちが見たのは人違いかもしれないし。実際に会うのは怖いけど、メールだけならもう少ししてみるよ。」
そう言って笑う彼女に「大丈夫?無理はしないでね。」と声をかけました。
やがて彼からは「君のことが好きなんだ。一度会ってみたい。」と言われ、盛り上がった彼女が彼と電話をしたそうです。
何度「もしもし」と話しても返答がなく、ようやく小さい声で「ごめん。ちょっと電話の調子が悪くて。」と聞こえた。
そこからは激しい風の音やザーザーという壊れたテレビのような音、キーというかなきり音のようなものが聞こえ、耐えられなくなった彼女は電話を切ったそうです。
「やっぱり彼のことは諦める。」そう呟いていた彼女でしたが、その後も電車に乗ると彼を見かけ、ついて行くと終電駅まで行ってしまうことが5回ほど続いたそうです。
「見ちゃいけない、着いて行ってはいけない。分かっているけど放っておけなくて。」
そう話す彼女は以前の活気を失い、まるで鬱になったかのように沈んだ顔で毎日を過ごすようになりました。
そんなことが続いた数カ月後、彼女は完全に学校に来なくなりました。
連絡をしても繋がらず、先生からは「遠い地に引っ越すと親御さんからは聞いているよ。」と言われただけです。
あの後も彼女はネットで知り合って好きになった男性の後を追いかけることがやめられなかったのでしょうか?
それを心配した親御さんが引っ越しを決めたとか?
そもそも、彼女が好きだった人は本当にこの世に生きている人だったのか?
色んな謎だけを残して彼女は学校から去っていきました。
現在では私も社会人になり、地元の小さな会社に就職したため、通学、通勤目的で電車は利用しなくなりました。
今でもたまに都心に買い物に行く時は電車を使うことがありますが、ふとあの時見た彼の姿が脳裏に浮かんで探してしまいます。
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