すっぽりと抜けた記憶
投稿者:魔界塔士 (8)
これはまだ私が小学生のころ私の通っていた小学校に転校してきたある男の子の話です。彼はスポーツが得意で力自慢でもあり、どちらかといえば見栄っ張りなやんちゃものです。そんな彼が小学校に転校してきてすぐにクラスの人気者になるのには時間はかかりませんでした。
私はどちらかといえば当時は引っ込み思案で内気な優しい少年でしたが、どういうわけか転校してきた彼とはかなり仲が良くなりました。そんな彼らと夏休みに私も肝試しと称してお墓に行くことになったのです。私は夜のお墓なんて気味が悪くて嫌だと思いましたが、彼がぐいぐい来るので私も根負けしてそれに参加することになったのです。
しかし、その当日彼と私と数人の友人たちでそのお墓に肝試しの下見に行った時のことです。それまでは友人たちとわいわい騒いでいた彼なのですがお墓に入ってからしばらくしてから無言になっていたのです。
私たちは、彼にそこで何度か話しかけたのですが彼はやはり一言もしゃべりませんでした。しかも、明らかに彼は顔色がみるみる悪くなっていくのが子供の私たちでもわかるくらいでしたので、私たちは彼が何か体調が悪くなったのだと思い、肝試しの下見を中止し、具合の悪そうな彼を彼の家まで送りました。
しばらくして、彼に会ってもあの時のことを聞いても彼は何も話してくれません。どうも彼はあの「お墓にいた」という記憶がないらしいのです。私たちは数人の友人たちと一緒にお墓にいたことは明らかなのですが、彼の記憶からはそれがすっぽりと消えているようなのです。それ以来、私たちはあのお墓の話はしなくなりました。
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