私がまだ小学生の頃の話です。
祖父母の住む雪国に帰省した際、母の運転する車に乗り込みぼんやりと外を眺めていました。
祖父母宅にバックで駐車している時、後部座席からぼんやりと窓の外を眺めていると、突然目の前に紋付き袴を着て笑顔で手を振っているおじいさんが現れました。
びっくりした私は「お母さん、おじいさんが車の横にいるよ!!」と叫ぶと、母も急ブレーキをかけて停車しました。
目視で確認できなかった母は、轢いてしまったかもしれないと慌てて外へ飛び出しましたが、そこには誰もいませんでした。その日は雪がしんしんと降りつもるような雪の日でしたが、足跡も残っておらず・・・。
怖くなった母と私は、急いで祖父母宅に入り、今あった出来事を話すと、祖父からたくさんの遺影を見せられ、「この中にさっき見た人はいる?」と聞かれました。
私はなんとなく「この人かな?」と思う人を指さすと、祖父母は嬉しそうに「その人はあなたが生まれる前に亡くなったひいおじいちゃんだよ」と教えてくれました。
みんなで「会いに来てくれたのかな?」となんとなく和やかになり、その場は終わったことを今でも覚えています。
この話はここで終わったのだと私は思っていたのですが、実は大人になってから母から続きがあることを教えてもらったのです。
例のおじいさん目撃事件のあと私たちは自宅へと帰路についたのですが、その後祖父母宅に一本の電話が入ったそうです。
それはご近所に住むよく来てくださったおじいさんの訃報を知らせるものでした。亡くなった時間は私が目撃した時間とほぼ一致。そのおじいさんの容貌は、亡くなった私のひいおじいちゃんによく似ていたそうです。
きっと最後の御挨拶に、正装できてくださったのかもしれません。
電話を受けた祖父母、報告を受けた母は背筋が寒くなり、私が大きくなるまでは内緒にしておこうということになったそうです。
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