窓の外を飛んでいく人の頭部
投稿者:ヤマネ (18)
短編
2022/04/19
22:03
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いつものように早朝に起きて、自宅で過ごしていた時のことです。
その日は梅雨に入る前の時期で、風もまったくない曇り空でした。窓の外には隣接する森の樹々が見えて、朝からあったかいコーヒーを飲んで落ち着く時間帯です。
そんな時、ふわっと真っ白くて大きなものが、窓の右側からゆっくりと空中を飛んできました。
それは最初はまるで半透明の真綿のようなものだと思っていたら、ゆっくり左に進むに連れ、人の顔のようなものだとわかってきました。
直径50cmの半透明の白い頭部が、風もない中で右から左へ流れていったのです。
顔は年の頃は高齢になった老婆のようで、左の側面で、無表情のまま前にゆっくり進んでいました。
直径が50cmくらいというと人の顔よりずっと巨大でしたが、不思議と怖いものであるとは思わず、しばし唖然として眺めてしまいました。
そのふわふわの頭部が真正面の窓から見えなくなると、受け流すことはできず、気になって側面の窓に回って確認しました。
しかしその真綿のような人の頭部は、すでに消え去っていて見ることはできません。
あとになって思うと、幽霊というよりは何か妖怪か精霊的なものだったのではないかと、自分の中では思っています。
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