バ美肉
投稿者:バクシマ (40)
『あ、ごめーん♪宅配が来たみたいだから、ちょっと出てくるね♪』
マウスがひとりでにクリックされ、マイクは消音になった。
『・・・お前か。配信中は入るなと言っているだろうが。』
半透明の父が、威厳ありげに話しかけてくる。
Vteberすなわちバーチャルユーティーバーは、主にインターネットやメディアで活動する2DCGや3DCGで描画されたキャラクター(アバター)もしくはそれらを用いて動画投稿・生放送を行う配信者の総称である。
「やめてくれよ・・・幽霊にもなってネカマなんて」
『ネカマではない。バ美肉おじさんだ』
「じゃかしいよ!」
バ美肉、すなわちバーチャル美少女セルフ受肉は、美少女のアバターを纏い(受肉)、ボイスチェンジャーを使うか自身の発声方法を工夫するなどして発声を美少女に変えるか、または地声のままで、美少女の3Dモデル・イラスト等を使いバーチャルな美少女になることを指す。
なかでも成年男性が受肉した場合は、バ美肉おじさんというそうだ。
「母さんが今どういう状態か分かっているのかい?父さんに先立たれて、どれほど落ち込んでいるか!」
親父霊は眼鏡をクイッと中指で上げて、ふぅっと息を吐いた。
「お前に夫婦の情の機微がわかるものか。年端も行かぬガキめが。」
やれやれ若造が、という顔をしているが、頭のネコ耳とミニスカートで台無しである。
親父は霊体なので、自分の様相を好きに変えられる。イメージした格好に瞬時になれるのだ。また、声帯も思いのままらしく、ボイスチェンジャーを使わなくとも少女ボイスを自然に出せるのだ。
「たしかに俺はガキだよ。でも親父も目もあてられない姿じゃないか。」
論点ずらしということは分かっている。だがこの姿の父に道理を諭されるのは受け入れられない。
「・・私は三十数年間、堅実に働いてきた。職場では良き上司として、家に帰れば良き夫、父親として。
だか、なぜか心は満たされなかった。」
「・・・父さん・・」
「私は探したよ。日々の仕事に追われながらも、古今東西の名著や宗教を研究して、私の心が求めているものが何なのかを探した。
・・・だが、ついに見つかることはなかった。」
「・・・父さん・・」
「しかしだ倅よ。死ぬ間際に気付いたんだ。いったい私は何を欲していたのかを。何がしたかったのかを。
・・・・・・私は、美少女になってチヤホヤされたかったんだ!!」
「・・・父さん!?」
「私は死の間際、美少女になりたいと願った!
そして神の御加護か、その願いは叶った!
私は父親らしさ、夫らしさ、男らしさから開放されたんだ!!
私はもうむさ苦しい成人男性ではない・・
お色気美少女エクソシストのトゥエンちゃんなんだ!」
「そんな・・・」
思わずクラついてしまう。
いまの時代の流れがどうあれ、
実の父親の、この手の告白に目眩がしてしまうのは息子として仕方のないことだろう。
・・・なんとか昔の親父に戻ってもらいたい。
「だからって・・そ、それに、自分のファンの視聴者を騙すなんて許されないことだよ!!
彼らだって、トゥエンの中の人は可愛い女の子だと夢見てるはずじゃないか!!」
「・・・彼らは私がおっさんだと知っている・・」
「・・え!?」
「知っているんだよ、私のファンは。私がスネ毛の生えた小太りの中年男性であることをね。」
「なんだって!?」
俺は知らなかったが、キャラクターがかわいいなら中身がおじさんでもどうでもいい、という価値観がこの界隈にはあるらしい。むしろ美少女の見た目で魂がおっさんというギャップに惹かれるというのだから、闇が深い。
「・・・それに、私にはもう恋人がいる」
「もうおなかいっぱいだよ!」
「同じVteverのボヘミアンくんだ。屈強な漁師でな。陽射しで焼けた黒い肌がセクシーなんだ。」
「聞きたくない・・・もう、聞きたくないよ・・」
俺は頭をかかえて、うずくまる
「とにかく私はもう、妻子という『枷』から開放されたのだ」
「『枷』って言っちゃたよ・・」
「ちなみにボヘミアンくんなんだがな・・」
「もうやめてくれ!もうたくさんだ!」
「ふん、自分が認められないものは拒絶するだけか。だからお前はいつまでも子供なのだ。
理解できないならば出て行け!私のサンクチュアリから出て行け!」
「俺の家だよ!」
俺は親父の暴言に心を痛め、部屋を飛び出してしまった。
バタンッと扉を閉め、廊下で放心していると部屋の中から
ぶっ飛んでて好きw
面白い、もっとやっちゃえー!
やばい、めっちゃ笑った。名作だわコレ
良いー!
美少年Vtuberに化けた冴えないおばさん・御袋キャラクターの幽霊もいるんですかね?????どんな夫婦関係なんだか。。。
こういう系どんどん出してww