嘘と真実
投稿者:りばお (1)
淡々と繰り返される目前の光景を刮目しながら、俺はすっかり硬直していた。
カチャリ……と、L字型の取っ手が下がったかと思えばスーっと静かに上がり切り、再びカチャリ……と降りて行く。
ヤバい。ヤバい。
かなり……ヤバい。
冷や汗が額に滲んでいく。痛いほどに感じる心臓の高鳴りが、脈打つ度に頬や耳、顔の皮膚表面なんかをじわじわと連動させる。
それでも下手に動けば――玄関の外でドアノブを上下し続けるナニカに気付かれるかもしれない。そう思うと、俺は一歩も動けなかった。
カチャリ…………。
…………………。
………………音が、止んだ。
……極力音を立てずに部屋に戻ろう。
そう思い、静かに踵を返そうとした。
――――時だった。
ガチャリ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ――。
激しくドアノブが上下し、ゴンゴンゴンゴンーーと、扉の鍵が何度も引っ掛かる。
「ンンンンッー! ンンンッー!」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
「ンッー! ンッンッンッンンンッー!」
男とも女とも分からない、喉を非常に強く鳴らしたようなうめき声が、扉の向こうで響く。色々な現象も加味して俺は外で扉を開けようとしているナニカがただの不審者だとは思えなかった。怖い。とにかく怖かった。
すると……ピタリ。
声と音は何の前触れもなく止まった。
「終わ……った……?」
だが――安堵する間もなく。
カタッ。
ガタガタガタッ!
継いだ音に俺は直ぐにハッと我に返った。郵便受けの音。だが、気づいた頃にはもう遅かった。
その光景に俺は声を失っていた。
まるで枝を白く塗りつぶした様な指先が、にゅっと郵便受けから伸びて――――明らかに人とは思えない長さになると、上へ向かって何かを弄り始めた。
…………鍵だ。
こいつは鍵を開けようとしている……!
かなり面白かった!
もっと評価されてもいいような気がするけど