嘘と真実
投稿者:りばお (1)
「うわあああぁぁああァァァァッー!」
精一杯の威嚇を込めて――俺は声を張り上げなら扉を蹴り付けた。何振り構わない。今はただ、家の中に入ろうとしているナニカを退けなければ……!
「イィぃぃイィぃいぃぃッッ!?!?」
その事が功を成したのか、ポストから伸びていた指先がシュッ。引っ込むと金切声の様な悲鳴が遠退いて行く。
「……居なくなった?」
数分の沈黙を確認した後、俺はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。気付けば部屋の電気もついている。
それから俺はスマホと財布を持って、外の安全を確認すると近くのコンビニへ駆け込んだ。つまり、バイト先だ。
夜勤の人は顔を真っ青にした俺を見て、
「どうしたん……?」
と訊ねたが、先程の話をすると大きく声をあげて笑い飛ばした。俺も逆の立場だったら笑い飛ばしていたと思うし、相手を小馬鹿にしながら話の詳細を聞いていたと思う。
そこから俺は日が登るまで時間を潰し、シフトを終えた夜勤の人に家までついてきてもらった。
「大袈裟だろ」
「いやでもマジで怖かったんですって」
自宅へ戻ると……電気やパソコン、エアコンはもちろん着きっぱなしで、夏の眩い朝日だけが室内を電気よりも強く照らしていた。
「どんだけ本気で蹴ったんだよ」
「そりゃ必死でしたもん……」
扉のへこみを見てバイト先の人は笑っていた。俺はと言うと、退去時に不動産屋へどう説明しようかと頭を抱えるしか無かった。幽霊のせいに出来るならしてやりたいが、こんな話を信じてくれる訳もなさそうだ。
昨晩の出来事は嘘なんじゃないかと思う程、言うならば何も無かったんだ。
お決まりのパターンでは室内に泥があったり、扉に黒いススが付着してたり……そんな事は無い、平穏な朝だけが帰宅した俺を出迎えていた。
「寝みーし帰るわ」
「わざわざありがとうございました」
「お前も疲れてるんなら寝ろよ」
昨晩の出来事は全て気のせいで、なんから夢でも見てたんじゃないかと思った。
……それでも扉の内側に残ったへこみと、しばらく続いたかかとの痛みが、確かに昨晩の出来事は現実なんだと笑っている。
その後も、その部屋でこれと言って何かが起こった訳じゃない。ただ、また電気が消えたり、トイレが一人でに流れたりはしたが、ここまで強烈な出来事はこれが最初で最後だった。
◇ ◇ ◇
かなり面白かった!
もっと評価されてもいいような気がするけど