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心霊

りばおさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

嘘と真実
長編 2022/04/08 21:50 6,194view
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「うわあああぁぁああァァァァッー!」

 精一杯の威嚇を込めて――俺は声を張り上げなら扉を蹴り付けた。何振り構わない。今はただ、家の中に入ろうとしているナニカを退けなければ……!

「イィぃぃイィぃいぃぃッッ!?!?」

 その事が功を成したのか、ポストから伸びていた指先がシュッ。引っ込むと金切声の様な悲鳴が遠退いて行く。

「……居なくなった?」

 数分の沈黙を確認した後、俺はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。気付けば部屋の電気もついている。

 それから俺はスマホと財布を持って、外の安全を確認すると近くのコンビニへ駆け込んだ。つまり、バイト先だ。

 夜勤の人は顔を真っ青にした俺を見て、

「どうしたん……?」

 と訊ねたが、先程の話をすると大きく声をあげて笑い飛ばした。俺も逆の立場だったら笑い飛ばしていたと思うし、相手を小馬鹿にしながら話の詳細を聞いていたと思う。

 そこから俺は日が登るまで時間を潰し、シフトを終えた夜勤の人に家までついてきてもらった。

「大袈裟だろ」
「いやでもマジで怖かったんですって」

 自宅へ戻ると……電気やパソコン、エアコンはもちろん着きっぱなしで、夏の眩い朝日だけが室内を電気よりも強く照らしていた。

「どんだけ本気で蹴ったんだよ」
「そりゃ必死でしたもん……」

 扉のへこみを見てバイト先の人は笑っていた。俺はと言うと、退去時に不動産屋へどう説明しようかと頭を抱えるしか無かった。幽霊のせいに出来るならしてやりたいが、こんな話を信じてくれる訳もなさそうだ。

 昨晩の出来事は嘘なんじゃないかと思う程、言うならば何も無かったんだ。

 お決まりのパターンでは室内に泥があったり、扉に黒いススが付着してたり……そんな事は無い、平穏な朝だけが帰宅した俺を出迎えていた。

「寝みーし帰るわ」
「わざわざありがとうございました」
「お前も疲れてるんなら寝ろよ」

 昨晩の出来事は全て気のせいで、なんから夢でも見てたんじゃないかと思った。

 ……それでも扉の内側に残ったへこみと、しばらく続いたかかとの痛みが、確かに昨晩の出来事は現実なんだと笑っている。

 その後も、その部屋でこれと言って何かが起こった訳じゃない。ただ、また電気が消えたり、トイレが一人でに流れたりはしたが、ここまで強烈な出来事はこれが最初で最後だった。

 ◇ ◇ ◇

5/7
コメント(1)
  • かなり面白かった!
    もっと評価されてもいいような気がするけど

    2022/04/15/11:48

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