嘘と真実
投稿者:りばお (1)
パソコンの画面……その淡い寒色系の薄明かりだけが室内を不気味に照らしている。だからこそ、違和感を覚えざるを得なかった。
「なんでパソコンの電気ついてんだ?」
俺のパソコンはデスクトップpcで、それにクーラーだって稼働を続けている。つまり、部屋の電気だけがピンポイントで消えていたのだ。
そんな窓付近に設置されたエアコンへ目を向けると窓の外に影が見えた。クッキリとした人影だった。まるで人をそのままシルエットにしたような、夜よりも濃い色をした影……。
「電気の接触か?」
…………気にしない事にした。
見間違いと言えば済む話だし、夜のせいで窓が鏡になって俺の陰影を映していると言えば説明がつく。しかしながら、ついつい独白が多くなるのは気を紛らわせる為でもあった。
とりあえず――。と、俺は窓に背を向けて部屋の入り口側、壁端に位置した部屋の電気のスイッチへ手を掛ける。
パチ。パチパチ。
電気は付かない。
となると……後はやはりブレーカーか。
ブレーカーは玄関の真上にある。
狭く短い廊下の、キッチンの先。
スマホのライトを頼りにブレーカーがある玄関へと向かうと、冷やかな感覚が背中を追いかけてくる。クーラーの冷気か。
全ては気のせい。一度怖いと思えば、些細な現象をも無意識の内に心霊的なものへ結びつけようとする。そう言うもんだ。
「ブレーカーは……っと」
玄関はとても暗かった。狭い通路と閉鎖的な空間がなおさら暗闇を助長させている気がした。それに部屋を締め切っていたせいか冷えた体に夏特有の温い空気が纏わりつく。
ブレーカーを照らす。
やはり……正常だ。
「電気の故障…………?」
いよいよ不安になってくる。先程窓に見た人影も相まって、感情が徐々に恐怖へとすり替わって行くのが自分で分かる。
気のせいだ。と言う、不可思議な事象を緩和する万能な言葉は、もはや俺の中で無効になりつつあった。
と――――その時、音がした。
カチャリ――それは微かな音。
その音の正体は目の前で動いていた。
ドアノブだ。
……カチャリ…………カチャリ……。
「………………うそだろ」
カチャリ……カチャリ……。
かなり面白かった!
もっと評価されてもいいような気がするけど