ふと、赤べこの前の居室に目がいきました。
私が少女の姿を見かけるようになった、布団の音が聞こえるようになった数か月前。
この部屋に入居していたお婆さんが亡くなったのです。
そのお婆さんとは長い付き合いで、研修の時には一緒に折り紙を折ったりしました。
「もしかして。」と思い、職場の上司にそのお婆さんの荷物は預かっていないかと聞きに行きました。
お婆さんには身寄りがなく、亡くなった後も荷物を預かっているとのことで詰所にある小さな缶を上司から渡されました。
その中には使っていたハンカチやポーチ、歌の本などが入っており、そして小さな日本人形が入っていました。
枕元に現れていた少女と、その日本人形の顔が一致。
上司に事情を説明し、特別にその人形を持ちだして寺に持って行くことを許可してもらいました。
住職にそのお婆さんの話と日本人形を見せると、「お炊き上げするから、これですぐに祓えるよ。」と言ってもらえました。
人形をお炊き上げし、お祓いを受けること数回で体調が改善し、寝る時にも何も起こらなくなりました。
住職からは「お婆さんはあなたのことが憎いから憑りついたんじゃない。あなたのことを心の底から信頼しているからこそ、あなたと一緒に居たいと考えたようだ。でも、それはあなたにとっていい影響を与えるものではなかったようだね。依存心、執着心に近いものを感じた。」と言われました。
介護の仕事をしていると、ご高齢の利用者が亡くなることは日常茶飯事です。
そのため、人が亡くなるということにも慣れてしまっている感じがあり、霊について考えたこともありませんでした。
人が亡くなることに関わる仕事だからこそ、憑かれる可能性も高くなるんだなとその時改めて考えさせられました。
その後1年近く介護の仕事を続けていましたが、最終的には退職を選びました。
というのも、私がお祓いをして体調改善してからも、私が働いている職場の詰め所を尋ねては「私、最近やけに身体がしんどくて。」と相談をする別部署の同僚の姿を何度か見かけたからです。
他にも、「精神を病んだと言って辞めていった人を何人も見たことがある。」という先輩の話もありました。
彼らがなぜ退職をしたのか、心身を病んだのかは分かりませんが、もしかしたら霊の影響かと考えると怖くなりました。
この仕事を長く続けていても、いつかは目に見えない何かに憑かれたり、体調を崩すことがある。
それを知ってしまったからこそ、真剣に別業種への転職を考えるきっかけになりました。
今回私に憑いたお婆さんのことも今でもよく覚えています。
いつも笑顔で優しく迎えてくれた反面、急に不安気な表情になって徘徊してはその辺の物を集める癖もありました。
私に対してもすごく優しく接してくれた反面、「お願いね。」と、依存傾向が強かったことも覚えています。
依存心も強くなれば執着へと変わり、亡くなった後もそれは続きます。
枕元に現れていたのはそのお婆さんが大事にしていた人形の姿だった。
思い返せば思い返すほど、怖さが後から増していきます。
今ではお祓いも済ませ、別の仕事を始めてから体調を崩すこともなくなり、風邪の1つもひかなくなりました。
退職を決めた時には心の迷いもありましたが、快調に仕事ができるようになってからはこれで良かったと感じるようになりました。
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