ついてくる手押し車の婆さん
投稿者:ヤマネ (18)
短編
2022/04/07
02:24
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冬の寒い日でしたが、自転車で買い物に行こうと思って、玄関から出ました。
途中の交差点で、近所に住む手押し車の婆さんがスッと通り過ぎ、家に隠れて見えなくなりました。
近くのスーパーに到着すると、決めていた品々の買い出しを始めました。カートを押して店内をうろついていると、さっきの手押し車の婆さんがチラッと階段そばの棚を通り過ぎたような気がしました。この時はまだ、あの婆さんも買い物に来たのか、といったくらいに考えていたのです。
買い物を追えてお店から出ていくと、自転車置場の影にいたさっきの手押し車の婆さんが、スッと通り過ぎて壁の影に見えなくなりました。
この時になって、タイミングがやたら合う婆さんだな、なんか嫌だなと考え始めたのです。自転車に荷物を乗せると、近くの公園に寄って休憩していこうと思ったのですが、すると途中の住宅地でも、手押し車の婆さんらしき背中がスッと一瞬だけ見えたように思いました。もう婆さんが瞬間移動してきているか、他人の空似で勘違いに違いありません。
私はしばし不安に襲われつつも公園でくつろぐと自宅に戻ることにしました。自転車で家の近くまで来た時です。近所で救急車のサイレンが鳴り響きました。そして救急車が通り過ぎる時に、手押し車の婆さんが目に入りました。私が救急車の後ろ姿をじっと見つめていると、どうしてかわかりませんが、乗っているのが、あの婆さんだと確信しました。
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