何年経過しても…
投稿者:りう (54)
俺は、母親に女手一つで育ててもらった。
父親が、俺が生まれる前に病気で亡くなったからだ。
俺はグレることもなく母親と仲良く暮らしてきた。
だから、これまでお付き合いしてきた彼女は、なるべく母親にも紹介してきた。
ただ不思議と、俺からお別れすることになった女の子(いわゆる俺がフったコ)は自然と紹介することはなかった。
何となく、始めからそうなることが分かっていたから、
なのかなぁと思う。
要するに、母親に紹介して結婚に繋がらなかったコというのは、俺がフラレたということ。
もちろん、このパターンのほうが多かった。
それほど多くの人と付き合ってきた訳ではないが。
そんな中で、19才の時、同い年のコと付き合っていたことがあったのだが、何カ月かすると、性格が合わないなぁと思い始め、俺から別れを切り出してサヨナラしたことがあった。そのコは右目横のホクロが特徴的な、小柄で、俺とは不釣り合いな美人だった。それでも、性格の不一致だけは何とも慣れなかった。
あまりにも美人だったので10年経った今でも時々、ニガい思い出として頭をよぎることがある。
勿体なかったかなぁと。
男とは未練がましい、そういう生き物だ。
そんなことが何度かあり、今、三十路を目前にして、やっと運命の人とめぐり逢え、正式に母親への紹介も済ませたところだ。
そんなある日、母親が真剣な顔で言ってきた。
「あなた、婚約したんならさ、あのコはどうするのよ」
え?あのコ?
「小柄で美人な あのコよ。右目の横にホクロのある。」
すぐにピーンときた。10年前のあのコだ。
特徴もそうだし、俺には勿体ない美人なコだったから覚えてる。
母親は続けた。
「私に『お付き合いさせてもらってます。』って会いに来たわよ。」
「そのコ、『中々お母様を紹介してくれなくて…』って泣いてたわ。」
は?いつ?
「おとつい。」
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