小学校の帰り道
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
その家には広い庭があり、車が2台くらい入る広さの、緑の金網で囲まれた一角があった。
よく見ると、その中には体長20センチ以上ある大きな亀が2匹とウサギが4~5羽いて、奥の小さな小屋には他にも何かいたように見えた。
K田君は金網の前でしゃがみこんで、亀に何か餌でもあげているようだった。
ここで僕は、食べきれなかった給食のパンの耳を持っていた事を思い出した。
この日に限ってなぜかパンの耳が硬かったから、食べたふりをしてこっそりとポケットに入れていたのだ。
K田君が何を食べさせているのかよく見えなかったが、僕も真似してパンの耳を金網の穴から差し出してみた。
すると、もう1匹の亀が僕の方に寄ってきて、おいしそうに食べてくれた。
亀にパンなんて食べさせていいのか?と思いながらもあまりの食べっぷりに僕は夢中になった。
亀がパンの耳をすっかり食べつくしたので、ふと横を見ると、K田君の姿はもうどこにも無かった。
思わず
「何だよ、そっちから誘ったくせに先に帰ったのかよ…!」
そう憤っていると、その先にはまた竹と竹の隙間があり、K田君はそこから帰ったのだろうと考えた。
そこを通れば帰れるはずだから、仕方なくそこから帰ることにした。
またさらに20メートルほど進むと、いつもの帰り道の大通りに出た。
ところが、その竹藪と通りの境目には緑色の金網で仕切られていて、そこからは大通りに出る事が出来なかった。
金網を伝って端まで行くと、塀との境目から何とか通りに出ことができた。
大通りからはその竹藪には金網で入れないから、その中がどうなっているのか知らないし、そもそも気にしていなかった。
次の日の下校の時だ。
この日も別のクラスの生徒を含めた数人で帰ることになった。
その中に3組の人がいたからK田君の事を聞いてみたが、そんな生徒はいなかった。
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