串刺し村にて
投稿者:誠二 (20)
庄屋はそういって百姓たちを追い返しました。
翌日、庄屋が目に入れても痛くないほど可愛がっていた一人娘が惨殺されます。鋭い枝に腹を貫かれ、まさに串刺しの状態でさらされていたのです。
変わり果てた娘の姿を目の当たりにした庄屋は嘆き悲しみ、犯人の百姓たちを殺した末命を絶ちました。
以来この村では庄屋と娘の供養の為、腹に米を詰め込んだ人形を串刺しにして捧げているのだそうです。
「過去の殺人の見立てをしてるんですか。悪趣味な」
「先祖が犯した罪を忘れぬためです。あなたたちをお呼びしたのは他でもない……この村が吸収合併でなくなる事になったんで、庄屋と娘の魂を鎮めてほしいんです」
村の消滅と同時に村人たちはよそに移住するそうです。自分たちがここを去る前に、先祖の過ちを清算したいというのが彼等の望みでした。
「わかりました。皆さんは家から出ないでください」
祖父は厳粛な面持ちで一同に言い渡し、お堂を借りて念仏を唱え始めました。
祖父の読経の間俺が命じられたのは、米粒に筆で写経する事でした。実は子どもの頃から手先が器用で、米粒に字を書けるのが殆ど唯一の取り柄だったのです。
(だから俺を連れてきたんだな……)
事前に「気が遠くなるほど多い米粒全部に写経しろ」と言われていたら絶対付いてこなかったので、孫の性格をよくわかっているなとあきれました。
無数の蝋燭を焚いたお堂に正座し、一心不乱に米粒に写経していると、ふいに生臭い風が吹いてカタカタと屋根や床が鳴り出しました。
「きた」
祖父の呟きと同時にガタンと一際大きな音が響きました。次の瞬間床板の一部がめくれ、鋭く尖った土の杭が飛び出しました。
「ひっ!」
肝を潰してあとじさるのと入れ違いにガタンガタンと連続して床板がめくれ、続けざまに杭が飛び出します。
悪霊が俺たちを串刺しにしようとしてる!
「米をだせ……はらわたを見せろ……」
蝋燭の炎が揺らめいて立ち消え、怨嗟に染まった男の声が闇に響き渡ります。
一体どうしたらいいのか……回れ右してお堂の戸に手をかけ、開かないのに絶望しました。外から突っかえ棒をされているのです。
「やばいぞじいちゃん!」
「米を投げろ!」
祖父の命令で我に返り、手に掴んだ米を力強く投げました。
直後に何かが不気味に蠢き、俺のすぐ背後に迫った闇が一掴みの米を咀嚼します。
俺が一粒一粒、魂込めて写経した米を食った何かが断末魔を上げました。
その後は祖父と二人がかりで写経を施した米を投げて回り、庄屋の悪霊を祓いました。
朝日を浴びた土の杭は脆くも崩れ去り、その塵を風が吹き清めます。
明け方には疲労困憊でぐったりし、様子を見に来た村人たちに心配されました。
「床板がめくれとる。あんたがたがやったんかね?」
「違います。悪霊の仕業です」
けいとらに よにんは むずかしい んじゃないでしょうか?
おいくらぐらい もらへたのかが きになります。
じゃ って話す人をいまだに見たことがない