姿の見えない来訪者
投稿者:レイレサ (64)
ある日、M子がずっと無断欠勤するようになってしまった。
パートの誰かが「M子が〇〇のお店で働いているのを見たよ」と言い出した。
黙って辞めて違うところに仕事に行ったようだ。
上司の判断でM子は退職扱いとなってしまった。
どうやらM子は無断欠勤する前に上司にはメールで相談したようで、延々とリーダーに対する不満が書かれていたらしい。
上司の目は曇っているから、当然ながらM子の悩みを一蹴してしまった。
一蹴されてしまったことで、おそらくは精神状態が限界に達してしまい、ばっくれてしまったのかもしれない。
上司はばっくれたM子のことを「仕事出来ないから嫌われるのは当然だ」とまで言い放った。
私はリーダー2人だけでなくて、上司も腐っていると思った。
腐っているのは上の3人だ、だからその下についているパートやバイトまで腐るのか。
私は腐りたくなかったので、上3人には調和しないようにした。
そのせいで「あの人の態度むかつく」と陰口を叩かれてしまった。
仕事先で孤立してしまった。
パワハラを黙認できずに本音をこぼしたことと、加害者の味方に立たなかったことで自分の方が悪者にされてしまったのだ。
仕方ないので開き直ることにした。
それからしばらくしてから、仕事場で不思議な出来事が起きた。
仕事場で品出しの作業をしていたのだが、急に両耳が聴こえなくなってしまった。
私は焦って両耳を塞いでみたり、飲み物を飲んで様子を見ることにした。
ほんの数分で両耳の聴力は普段通りに回復した。
あれは一体なんだったのか?
そう思った瞬間に、ふと退職したM子の顔が頭に浮かんできた。
頭から離れてくれないM子の無表情な顔。
ずっと無表情で私を見ているM子の顔に少し可哀想だと思ってしまった。
ものの数分ほどで頭からM子の顔は消え失せていった。
私は後日、能力者の方にそれとなく聞いてみた。
能力者の方の見解はこうだ。
「君が体験したことはたぶんM子さんの想念みたいなものを感じたからだね」
「耳が急に聴こえなくなったのは、君の魂がそれを感じ取ったからだ」
「M子さんの生霊とまではいかない、意思があまり感じ取れないから多分幽体だね」
会社でで出世する人間は全部とは言わないけど、周りを蹴落として上がっていったりする最低人間はたくさんいますよ。