甲羅から出てこない
投稿者:繭 (42)
短編
2022/02/02
22:16
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子どもの頃近所にAちゃんが住んでいました。
Aちゃんはとても大人しく行儀のいい子で、母にはよく「あんたもAちゃんみたいなお嬢様だったらね」と言われました。
しかもAちゃんは小学校低学年ですでに1人部屋を与えられており、色んな本やおもちゃ、ゲームを持っていたのです。
私はちょくちょくAちゃんの部屋に入り浸り、おいしいお菓子をごちそうになりました。
さらにAちゃんはペットのミドリガメを飼っており、その子を観察するのも楽しみだったのです。
しかし亀は私がどんなに呼んでも反応してくれず、やっぱり飼い主じゃなきゃだめなのかとがっかりしました。
「ちょっと一階に行ってくる」
「うん」
Aちゃんが部屋を出た後、好奇心に負けて亀を抱っこし、膝の上でひっくり返しました。
次の瞬間、恐ろしい真実を目の当たりにして「あっ」と叫んでしまいました。
亀の手足が切断されていたのです。
どうりで甲羅から出てこないはずだ……麻痺した頭の片隅でそんな事を考えた直後、声がしました。
「あーあ、ばれちゃった」
弾かれたように振り向けば、部屋の手前の廊下にハサミを持ったAちゃんが立っていました。
その後私は家に飛んで帰り、Aちゃんとは一切会っていません。
亀の首はまだ残っているのでしょうか。
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