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呪い・祟り

笑い馬さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

万燈祭の夜に
長編 2021/01/11 18:37 42,828view
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何分ぐらい歩いただろうか。暗い闇の中、同じような景色がずっと続いているため、時間感覚や方向感覚、距離感覚も奪われつつある。
やがて、細い獣道は開け、本当に荒れ地に出た。
せいぜい九畳ほどの狭いスペースだが、確かに荒れ地はあった。除草剤を撒いたみたいに下草は茶色く枯れ、赤茶けた地表がむき出しになっている。

荒れ地の奥に何かある。
明かりはO君が持つ行灯の明かりのみ。
「俺が見てくるよ」
O君は怖がることなく、荒れ地の奥まで進んで行った。
O君がはたと立ち止まる。

「アアーー」

と驚いたような声をO君が口にした。
O君の見つめる先、例の石燈籠があった。
「この燈籠、赤く……はないね」とA君。

「本当にあるとはな」と私が呟く。

O君は何も言わず、私たちに一言たりとも断りをいれず、行灯の中のロウソクを、燈籠の中にロウを垂らして立てた。

「おいおい、燈籠に火を灯したら呪われるのだろ。大丈夫か」
と私は突然のO君の行動にビビってうろたえながら言う。
O君は何も言わない。
私とA君に背を向けて、無言で立ったままのO君。
「おい、O君どうした」
「Oさん、いったい?」
私たち二人は声をかける。
突然、O君の肩が震えだした。

かたかた、かたかたーー
首を奇妙に振り回して、何かに取り憑かれかのような、人間の動きとは思えぬ仕草だ。狐憑きだとか、悪霊憑きのような、そんな動きだ。

「お、おい」
私は恐る恐る、O君の肩に手を置いた。
瞬間、私の手は思い切りガッとつかまれた。
O君の手が、私の手を強い力でつかんでいる。私は恐怖のあまり、その手を無理矢理振りほどいた。

「アーアアアーー」

とうめき声をあげて振り返り、O君はニコリと笑った。
「いや、冗談だよ。びびった?」とO君は朗らかに言った。
「まさか、演技か今のは?嘘だろ信じられない冗談だ」
「悪いな、そんなに驚くとは思わなかったぜ。赤い石燈籠に火を灯したら何か起こると思ったのだがなあ。拍子抜けだ」
そう言うとO君がため息をついた。
「僕はもう帰る」
O君がそう言って背を向けた。

4/9
コメント(5)
  • 良かった

    2021/02/23/16:47
  • 渡来人!

    2021/05/25/19:59
  • 良い
    でも血はA君のじゃなかったのか…A君は神隠し(のようなもの)?

    2022/07/10/12:14
  • 怖い…とは違うけれど、物語としてとても面白かった。

    2023/08/24/18:56
  • 面白かった。
    興奮ポイントは少ない。が、脚色すれば何とでもなる。
    つまり、元ネタとして使えそうな話

    2023/10/11/12:44

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