万燈祭の夜に
投稿者:笑い馬 (6)
何分ぐらい歩いただろうか。暗い闇の中、同じような景色がずっと続いているため、時間感覚や方向感覚、距離感覚も奪われつつある。
やがて、細い獣道は開け、本当に荒れ地に出た。
せいぜい九畳ほどの狭いスペースだが、確かに荒れ地はあった。除草剤を撒いたみたいに下草は茶色く枯れ、赤茶けた地表がむき出しになっている。
荒れ地の奥に何かある。
明かりはO君が持つ行灯の明かりのみ。
「俺が見てくるよ」
O君は怖がることなく、荒れ地の奥まで進んで行った。
O君がはたと立ち止まる。
「アアーー」
と驚いたような声をO君が口にした。
O君の見つめる先、例の石燈籠があった。
「この燈籠、赤く……はないね」とA君。
「本当にあるとはな」と私が呟く。
O君は何も言わず、私たちに一言たりとも断りをいれず、行灯の中のロウソクを、燈籠の中にロウを垂らして立てた。
「おいおい、燈籠に火を灯したら呪われるのだろ。大丈夫か」
と私は突然のO君の行動にビビってうろたえながら言う。
O君は何も言わない。
私とA君に背を向けて、無言で立ったままのO君。
「おい、O君どうした」
「Oさん、いったい?」
私たち二人は声をかける。
突然、O君の肩が震えだした。
かたかた、かたかたーー
首を奇妙に振り回して、何かに取り憑かれかのような、人間の動きとは思えぬ仕草だ。狐憑きだとか、悪霊憑きのような、そんな動きだ。
「お、おい」
私は恐る恐る、O君の肩に手を置いた。
瞬間、私の手は思い切りガッとつかまれた。
O君の手が、私の手を強い力でつかんでいる。私は恐怖のあまり、その手を無理矢理振りほどいた。
「アーアアアーー」
とうめき声をあげて振り返り、O君はニコリと笑った。
「いや、冗談だよ。びびった?」とO君は朗らかに言った。
「まさか、演技か今のは?嘘だろ信じられない冗談だ」
「悪いな、そんなに驚くとは思わなかったぜ。赤い石燈籠に火を灯したら何か起こると思ったのだがなあ。拍子抜けだ」
そう言うとO君がため息をついた。
「僕はもう帰る」
O君がそう言って背を向けた。
良かった
渡来人!
良い
でも血はA君のじゃなかったのか…A君は神隠し(のようなもの)?
怖い…とは違うけれど、物語としてとても面白かった。
面白かった。
興奮ポイントは少ない。が、脚色すれば何とでもなる。
つまり、元ネタとして使えそうな話