ハザードランプ
投稿者:黄な子 (7)
何年前の出来事か、5号機が実装される前だから、10年以上前だと思う。
大学生になってからパチンコを始め、すっかりハマった俺は、祝日のその日も近所のパチ屋に通ってた。祝日だと覚えているのは、普段はあまり人のいないそのパチ屋が駐車に困るほど混雑してたからだ。車で駐車場を何周かした後、やっと一つ空いてるところを見つけたが、隣がグレー色のシャコタンのいかつい車で、ぶつけないかとひやひやしながら駐車した。
店に入って2時間ほど打ったけど、再抽選すら入らずに空振り。持参したマイルドセブンもひと箱吸い尽くして手持ち無沙汰になった俺は、見切りをつけて帰ることにした。
駐車場に戻ると、まだ隣にシャコタンが停まっている。不審に思ったのは、シャコタンの左右のランプがハザードを焚いてるみたいに点滅していたからだ。間違って押したのかなと思ったけど、来た時には点いてなかったし、変だなと思った。
車上荒らしを疑われるのも怖いし、正直関わり合いになりたくなかったけど、好奇心が抑えられなくなった俺は少しだけ様子をうかがうことにした。
車内を見ると、後部座席にチャイルドシートがくくられていた。そこに何歳か分からないけど子どもが1人、シートベルトで固定されていた。ぐったりしていて、意識もなさそうなその様子は明らかにやばかった。なんとかしなきゃと思ったが、ドアに手をかけることはしなかった。警報とかあるとやばいと思ったし、ドアが開いたとしても俺ができることはないと思った。
少し悩んだ後、警察に通報した。数分か、数十分後かに来た警察に事情を説明した後、慌ただしく動く彼らを眺めていた。なぜ他人の車をのぞき込んでいたのかと、警察は当初俺を不審に思ってたようだったが、ハザードランプの旨を伝えると一応納得はしてくれたようだった。警察が救急車を呼ぶのを見て、まず救急車を呼ぶべきだったなあとぼんやり思ったのを憶えている。ボーっとしている俺に気を使ったのか、あとはこちらが預かりますから何かあったら連絡しますと言われたので、お言葉に甘えて家に帰った。
家に帰ってから一時間後くらいに警察から電話が来た。
開口一番に車に触っていないか聞かれた。正直に触っていないと答えると、そうですよねーと軽い感じで応じられた。何かあったんですかと聞いても、流石に口が堅くあまり事情は分からなかったが、中にいた子どもは無事に保護されたことを教えてくれた。安心して会話を終わらせようとすると、最後に一ついいかと問われる。
「ハザードランプは最初来た時は点いてなかったんですよね?」
「はい、2時間くらい前ですけど」
「…そうですか」
「何か気になる点でもあるんですか?」
「いやね、こういうのほんとは言っちゃダメなんだけどね。
車のドアは閉まってたし、荒らされた痕跡も残ってないんですよ。とすると、
中からハザードランプを押したとしか考えられないんですよね。」
これは何がどう怖いの?
ご先祖さまか誰かが、この子を助けるためにランプ光らせて見せたのかもね。
助かって良かった。
子供放置のDQNパチカスは罰を受けますように。
子供が自分で押した…?