金縛りの中で

いつからの頃からかは分からないが、金縛りをよく経験する。
憶えている限りでは、小学校中学年の頃にはもう経験していたような気もする。

金縛りには個人差があるというが、私の場合には目以外の部分が動かなくなる。
そして、胸の上に何かがのっかっているようかのような息苦しさがある。
一般的な、よくある金縛りの類だろう。

子どもの頃は恐ろしかったが、大人になるにつれて、睡眠の質がどうとか、疲労の蓄積がどうとか、ノンレム睡眠の脳の働きがどうとかで、金縛りが心霊現象ではなく、生理的現象であることを理解するようになった。

しかし、今でも金縛りの際には、目を開けることができない。

覚えている限りでは金縛りの際に目を開けたことはない。これまで一度もない。
金縛りが起きたとき、私は常に瞼を閉じたまま眼球を動かして、逆説的には、
眼球しか動かすことができないことから金縛りの訪れを確かめていた。

恐ろしいのである。10年来続くこの現象が、生理的現象ではなかったときのことが。
もし目を開けたとき、本当に胸の上に何かがあったら、あるいは、居たら。

だから私は今でも、金縛りが起来た時には、それが生理的現象であることを信じながら、それが解けるのを瞼を固く結びながら待っている。瞼の向こうにある何かを否定しながら。