井の頭公園の首なし幽霊

学生のころ、東京・吉祥寺でよく飲んでいた。酔っぱらったまま、近くにある井の頭公園にもたびたび出入りしていた。春先に行くと、夜桜がきれいだったことをよく覚えている。

でも、公園には妙なうわさがあった。私もそのうわさ話を友人に聞かされた。白い服を着た、首のない女の幽霊が出るから、深夜に公園に行くのはやめた方がいいのだという。幽霊は手招きしてくるが、それにつられて近づくと公園にある池に引きずり込まれるのだという。

それだけなら、よくありがちなうわさ話でしかなく、正直言って怖くも何ともない。気味が悪いのは、その公園で実際に死体遺棄事件があったからだ。

私が公園をうろつくようになるよりもさらに10年ほど前、公園のごみ箱から遺体の一部が発見された。清掃員の女性が人間の足首を発見したのだという。

あの有名な井の頭公園バラバラ殺人事件だ。

遺体は医学的知識を必要とする特殊な方法で解体されており、被害者の胴体の大部分と頭部は未だ見つかっていない。

被害者は三十代の男性だったという。

いったい、白い服の首のない女性はだれなのだろうか。