落ちていた医師のカルテ
投稿者:バルス (4)
これはある年の夏、まだ私が中途で入職したての頃、病院で夜勤中に体験した出来事です。
その日、私は夜勤をする救急室にて患者対応をしていました。
何台か救急車が入り、その内の1人が当院かかりつけの患者でした。
「カルテが必要」と言われ、内科外来へカルテを取りに行きました。
救急室と内科外来は場所がかなり離れており、5分くらい歩いてたどり着く所にあります。
夜間なので内科外来までの電気は完全に消えており、懐中電灯を持って取りに行くのです。
病院勤務は慣れていたものの、やはり怖いなーと思いつつ、私はカルテを取りに行きました。
やっとの思いでたどり着き、内科外来のドアを開け、電気をつけます。
やはり夜の病院というのはとても不気味です。
実際は何人もの方が亡くなっている場所なので、霊という存在に対して敏感になります。
必死で今度の休みは何しようか、など楽しい事を考えながらカルテを探し、見つけて帰ろうとすると、先程開けたドアの前にカルテが一冊落ちていました。
見てみると、そのカルテはNさんという方のものでした。
こんなとこにカルテなんて落ちていたかな?と思いつつ、元あっただろう場所へ戻しておきました。
その瞬間。
プルルルルルルル
電話が鳴りました。
この時間に内科外来に電話…?
疑問に思いつつ電話をとってみると
「……見てよ…」
と囁くような声がしました。
私は真っ青になり、一心不乱に内科外来から抜け出しました。
そして救急室に戻り、先輩に今あった出来事をすべて話しました。
すると先輩は真っ青になりながら私に昔の話をしてくれました。
この病院で働いていたNという研修医がいた事。
そして、そのNという研修医が夜勤中にトイレで首を吊っていて、満面の笑みで死んでいた事を。
あの声は研修医のNという方だったのでしょうか。
だとしたら、彼は一体何を見て欲しかったのでしょう。
カルテの中には、何が書いてあったのでしょうか…。
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