私を呼び止めた声は間違いなく、、、

私が看護師１年目の時の話です。
念願の看護師として最初に配属されたのは循環器病棟でした。
最初はドタバタでしたが、数ヶ月も経つと夜勤に入るようになりました。

810号室の個室にはIさんという、80歳くらいの男性患者さんが入院していました。病名は心不全。そのため、Iさんは主治医より、厳しい水分制限が指示されていて水も飲めませんでした。

ある夜勤の夜、810号室よりナースコールがあり、私が担当だったため、Iさんのベッドサイドに行きました。
Iさんは「氷を持ってきて欲しいんだ」と言いました。

私は水分は取れないからと断りましたが、「お願い」と何度も懇願され、根負けして、氷を１つIさんに持っていきました。

また次の夜勤でも同じように氷を頼まれ、新人だった当時、気の毒というのが先行して、氷をまた１つ持っていきました。

次の勤務は日勤でした。朝ナースステーションに行くと、申し送りで810号室Iさんがお亡くなりになったことを聞きました。
そういうことは日常茶飯事、私はその日の日勤業務に終われていました。
忙しく廊下を歩いていたところ、、、810号室の方から呼び止められるように「○○（私の名字）さーん」と男性の声が聞こえました。
担当患者さんかな??後ろを振り返りましたが、呼び止めている男性の姿はありませんでした。その声はIさんの声でした。

Iさんから呼ばれたのはその一度きり。でも間違いなくIさんでした。呼び止めた後に何を伝えたかったのでしょうか。