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ヒトコワ

キミ・ナンヤネンさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

描いた絵が現実に
短編 2021/12/23 01:29 3,286view

僕は小学6年生まで、ある能力を持っていた。

スケッチブックに描いた絵が実物となって現れる、というものだ。

ここからは、この現象を「実体化」と言うことにする。

僕は両親との3人家族で、父はいわゆるサラリーマン、母はパート勤めという、ごく普通の家族だ。

父は大手商社に勤めていて、時々海外へ出張することがあった。

僕が小学3年生の時だったと思うが、父がある国からお土産を持って帰ってきた。

それは、表紙が何かの動物の皮で作られたスケッチブックと色鉛筆のセットだった。

何か好きな物でも描いてみなさいと父が言うので、そのスケッチブックにハンバーグの絵を描いてみた。

すると、その日の晩御飯はハンバーグだった。

ただ、スケッチブックに描いたそのページはなぜか無くなっていた。

これが最初の「実体化」だった。

ある日、僕はウサギの絵を描いてみた。月にはウサギがいるという話を聞いたからだ。

すると翌日、母がウサギを貰って来た。母の友人が飼っているウサギが増えて貰い手を探していたそうだ。

この時もまた、描いた絵は無くなっていた。

2回だけではただの偶然だろうとその時は思っていた。

ウサギとくれば次は亀だろうと思って、スケッチブックに亀の絵を描いてみた。

すると翌日、庭に体長が20センチ程の亀が迷い込んできた。僕はこの亀も飼う事にした。

この時も、描いた絵は無くなっていた。

3回続くとこれは偶然ではなく、僕の特殊な能力だと思うようになった。

自転車を描けば、おじいちゃんが誕生日に自転車をくれた。

車を描けば、父は新車に乗り換えた。

外国にしかいないというカブトムシを描けば、父が出張のお土産で、それを模した木彫りの模型を持って帰ってきた。

本物のカブトムシは外国から持って帰れないらしく、仕方が無いと言っていた。

しかしいずれにしても、描いたはずの絵は全て消えて無くなっていた。

こうやって実体化は何度も繰り返された。

結局、両親にはその絵を1枚も見せていなかったことに気が付いた。

実体化してから絵が無くなったのか、絵が無くなってから実体化したのか、もはや分からなくなっていた。

いつの間にか、スケッチブックの紙は残り2枚となっていた。

セットの色鉛筆はまだ残っていたから、他のスケッチブックに絵を描いてみたが、実体化はしなかった。

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コメント(3)
  • ツイッターの方で「闇芝居」と被っているのでは?という指摘がありました。
    私はそれを見ていないのですが、本当に被っているのなら教えてください。
    作者より

    2021/12/23/02:34
  • 確かに描いた絵が実体化する設定はありますが、内容は全然似てないので大丈夫だと思います

    2021/12/23/09:20
  • ご返事ありがとうございます。
    ツイッターの方でも内容は違うとのことで安心しました。
    作者より

    2021/12/23/18:46

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