消えた担任
投稿者:こはる (15)
高校の修学旅行での話です。
旅行先は広島・長崎と関東の高校では定番のコースでした。
広島では原爆資料館へ行ったり、記念の像の前で平和を祈ったりしました。
確か長崎へ移動する前に、一泊だけした旅館だったと思うのですが、私たちクラスの部屋が、なぜか他のクラスの人たちの部屋からちょっと離れていました。
みんなの列から離れて、不思議に思いながら部屋まで歩いてたどり着くと、私たち7、8人に対して部屋の広さが異様にだだっ広く、ここで寝るのはちょっと心細いなあ、と思いました。
消灯時間になり、明かりを消し広い部屋の真ん中にみんなでくっつけた布団に横になりお喋りしています。
私は友達と向かい合って喋っていて、その奥には部屋の出入口である襖がちょっと開いているのが見えていました。
玄関と洗面台を照らす明かりがそこから漏れています。
暗がりの友達の顔を見ていて、ふと目線を襖のほうへやると、男の人の影がこちらを黙って見ていました。
ぎょっとした私はお喋りをやめ、黙りました。
その日の夜は、担任の男の先生が私たちの部屋に何度も見回りにきて注意していたので、(また担任が来た!説教される!)と反射的に思ったのです。
逆光で先生は真っ暗の影としか見えなかったのですが、メガネのフレームがきらりと光って、(担任だよな?)と思ったのです。
でもいつまでたっても先生はなにも言わず、ただこちらを見ています。(女子の部屋に黙って入ってきてきもちわるい…)とこちらも黙って何か言われるのを待っていると、その影は襖の向こうにさっと姿を隠してしまいました。
玄関から出ていく様子もなく。
私のとなりで同じくその影を見て、怒られるのを待っていた友達と(何だろうね…?何してるんだろう?)と目を見合わせていると、それまで寝ていた別の子が急にむくっと起きて、「トイレ」と襖のほうへずんずん歩いていってしまいました。(あ~!そっちには担任が!)と心の中で叫びました、が、その子は無事にトイレをすませ、普通に部屋へ帰ってきてしまいました。
そこで私たちはずっと(もしかして…)と思いつつ口にできなかったことをやっと口にしました。「あの、そっちに誰もいなかった…?」と。
答えはもちろん「誰かもいないよ」
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