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不思議体験

Ashさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

まだ見ぬ先にある港
長編 2021/10/19 23:13 3,725view
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幼少期、私は散歩をする事が大好きで、よく近所の河原や林等を歩いていました。
飛んでいる虫たちや、川の流れ、魚たちを見るのが大好きでした。

ある日、私は「もっと奥に行ってみよう!!」と意気込み、いつもより遠くの方に行くことにしました。
天気は晴れで絶好の散歩日和、私はウキウキしながら、まだ見ぬ先に歩みを進めました。

いつも行く道は、色んな人が散歩に使ってる道でもあるので、意外と道が整っていましたが、その道も徐々に草木や岩等が目立ち始め、
「散歩道」というには多少の険しさがありました。
しかし私は、ある種冒険家みたいな感覚に囚われ、更にワクワクしながら、草木を分け、歩みを進めました。

次第に快晴だった空は薄暗く曇り、辺りは私の知らない景色が広がりました。
私が住んでいた町は割と田舎であり、昼間も人通りは無いとは言え、その場所は余りにも静かでした。

私は少々怖くなりながらも、先に何があるのかという好奇心の方が勝り、先に進む事にしました。

気付けば辺りは仄暗く今にも雨が降りそうな雲模様で私は「あー…傘持って来るんだった…」なんて他愛ない事を考えつつ、私は先を進みました。

そして、今まで草原や田んぼ道だった景色が一変、何処かの港にたどり着きました。

いきなり景色が変わり、私は少し混乱しました。今、私の目の前には確かに港があり、その先には海が広がっていました。
景色は仄暗い曇天模様、人気も無く、ただ波の音が聞こえるだけ。
そんな中私はただただ「こんな場所、あったんだ」と少し回りを見渡し考えていました。

ここが港で先が海となると、これ以上の探索は難しいと思い、私は家に戻る事にしました。

ただ、私はこの時、港から出る時の記憶がありません。気づくと草木の多い道に戻り、知っている道に戻りました。

私はふと振り向き「この道の先に港なんてあるのか?」とか少し考えました。
子供の無い知恵絞り考えていくと少し怖い気分になり、早歩きで自宅に戻る事にしました。
親に話そうかと思いましたが、少し前に遠くまで散歩した事を親に怒られた事を思い出し、今日起きた出来事は私の中の思い出としてだけ残す事にしました。

それから数年、私は高校生になり、散歩から自転車で色んなところをサイクリングする趣味に変わり、その日もちょっと遠くのショッピングセンターまでサイクリングしていました。

その時ふと、幼少期のあの港の事を思い出し、「ここら近辺に海、ましてや港なんて無かったよな…?」と思い、幼少期の記憶と、
今の自身の地理的感覚を頼りに、私は改めて、あの港に向かう事にしました。

道はほぼ一本道だったので、記憶に頼る必要もなく、そして身体も成長していたので、その道を進む事は大した労力でも無かったです。

そして、歩きついた先ですが、普通の道路で車が行き来して、港や海なんてものは存在しませんでした。
近くに少し大きい用水路なんかもありましたが、それが海に見えるなんて事は、幼少期の私でも思う事は難しい状態でした。

私はその景色に少し混乱し、辺りを見回していました。
幼少期、結構歩いたとは言え、子供の移動距離なんてたかがしれています。
スマホの地図アプリで周辺を調べても、海や港なんて、何処にもありません。

私は、ただただ過去の記憶を信じられなくなり「あれは夢だったのか?」と考えましたが、確実に記憶に残っており、とても印象深いものなので、脳裏に刻まれています。

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