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不思議体験

ROSEさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

アイスクリームを半分こ
短編 2020/12/23 07:46 3,150view

今から50年近く前、私はかなり山奥の村に生まれました。
一番近い隣の家までだって、100メートル近くあります。築100年近い、オンボロのだだっ広い家。すきま風が吹いてくるたて付けの悪い戸。
田舎らしい人付き合いが長く続いていたところだったので、近所との付き合いやつながりも強く、気軽に行き来していたことを覚えています。

私が3歳になる年でした。妹が生まれるということで、母は病院にいて、祖母が私の世話をしていました。昔のことはあまり覚えていない私ですが、なぜかこのときのことだけはよく覚えています。
たぶん、母がいなくて寂しかったからなのでしょう。どんな服を着ていたか、祖母がどんな話をして私を慰めてくれていたのか、はっきりと覚えているのです。

ある日、近くの家のおばあちゃんがいつものように家に来て、祖母と話をしていました。ガチャガチャと話すおばあさんで、少しうるさく、独特の口調をしていました。
二人が話に花を咲かせていると、「トントン、トントン」と、誰かが戸を叩くような音がしました。私は、お母ちゃんが帰ってきたのだと思い、喜んで戸を開けました。
すると、そこにはお母ちゃんではなく、小学校3.4年生くらいの半ズボンを穿いた男の子が立っていたのです。
とてもニコニコしていて、優しそうだったことを覚えています。見たことがない人でした。

男の子は、今買ってきたばかりのようなアイスクリームを手にもっていました。

それは、今ではあまり見かけない、スティックが2本付いているタイプのアイスで、男の子は半分私にくれたのです。

「おお、そうかそうか、アイスクリームもってきたのな。」近所のおばあさんが言いました。私は、おばあさんのお孫さんだと思いました。
「いいんだいいんだ、食べろ食べろ」近所のおばあさんは続けてそう言ってくれたので、私はアイスをもらい食べたのです。
私の記憶はここまでです。なぜか、鮮明に覚えていて、私の中では良い思い出となっている出来事でした。

あれから30年近く経ち、私は結婚して他の市で暮すことになりました。
結婚式から数年後、私の祖父が亡くなりました。田舎なので、今でもお葬式はたくさんの人が手伝いに来てくれて、忙しく準備をしてくれます。家もそうでした。

お葬式の当日、あの近所のおばあさんのお孫さんが来てくれました。今までちゃんと顔を見たことがありませんでしたが、おばあさんの息子。
つまり、その方のお父さんとそっくりなので、すぐにその方が近所のおばあさんのお孫さんだとわかりました。
私は、話の流れで、大昔、アイスクリームをもらって食べたことがあり、その時のことは今でもよく覚えているのだと伝えました。ところがです。その方は知らないというのです。そしてこう続けました。
「よく考えてみてください。そのころその年齢なら、今は〇才くらいですよね?私はもうすぐ60才になりますよ。年齢が合いません」と。確かにそうです。

私が3才くらいのころ、おばあさんのお孫さんは高校生くらいのはずです。それに、顔の雰囲気も全然違うのです。「でも、おばあさんはその男の子のことをよく知っているふうだったなあ」私の近所に、その年齢の男の子はいません。
それに、よく考えてみれば、せっかく買ったアイスクリームを、わざわざ私に半分くれるなんて奇特な子供なんているんでしょうか?あれはいったい誰だったんだろう…。不思議だなと思っていました。
あの日アイスクリームをもらったことは、主人や子供にもよく話していたことだったので、祖父の葬式で私の勘違いだったことも二人に話しました。

そんなこんなあり、アイスクリームのことも祖父のお葬式のことも忘れかけていたころです。
義母が、部屋の掃除をしたとかで、主人の子供のころのアルバムを持ってきました。
義母は、洋裁を仕事にしていた方なので、主人に着せる服も手作りしたものがありました。田舎らしくないお洒落な洋服を着た主人は、都会っぽくて可愛らしく見えました。

1才、3歳、小学校と、どんどん大きくなった主人の写真を見ながら、主人と二人でゲラゲラ笑いながら時間を過ごしていたのですが、ある一枚の写真を見てドキッとしたのです。
それは、小さなころの主人が、お友達らしい女の子にお菓子をあげている写真でした。優しいまなざしが、私が小さかったころにアイスクリームをくれた男の子にとても似ていたのです。
もちろん、主人とは生まれも育ちも違うので、接点など一つもありません。でも、似てるんです、とても。

一番似ていると思ったのは、脚でした。主人の脚は少し特徴があって、太っているわけではありませんが、太ももが太いのです。私にアイスクリームをくれた男の子も、半ズボンを穿いていたので、脚の雰囲気を覚えていました。確かに、太ももが太めでした。「ねえ、ありえないと思うけどさ、昔女の子にアイスクリーム半分あげたことあった?」なんて馬鹿なことを聞いてもみたのですが、もちろん答えはノーです。何とも説明できない出来事ですが、私はやはりあれは主人だったのではないかなと思いたいんです。

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