愛猫「アイコ」に呼ばれた不思議な話
投稿者:Kooma (2)
高校生の時の話です。私には保育園から仲良くしていた同性の友人、Hが居ました。保育園、小学校、中学校、高校と一緒で、習い事も同じだったので、大きな喧嘩も時にしつつ、ずっと仲良くしていました。
それが起こった日は、部活が休みの日の放課後でした。
私とHは学校終わりに繁華街に寄り道し、タピオカを飲みながら最近ハマっている音楽や漫画、アニメの話でいつものように盛り上がっていました。そろそろ晩御飯の時間になるから帰ろうかと、バス停に向かっていた時です。道路を挟んで向かい側に、私が昔飼っていて行方不明になっていた愛猫、「アイコ」が見えました。あの縞模様、間違いありません。
「アイコがいた!」
私はHにそう言って、一刻も早くアイコを捕獲し連れて帰りたい衝動に駆られました。なにせ、もう帰ってこないと思っていたのですから。
すると、Hは私の腕をぐっとつかんで引き寄せました。
「なんで邪魔するの!?」
思わず変な声が出ました。すると、目の前の道路を、やんちゃそうなバイクが猛スピードで通り過ぎたのです。私が何も考えずアイコの方に飛び出していたら、轢かれていたかもしれません。
「ごめん……」
私は道路に飛び出そうとしたことを謝り、止めてくれたお礼をHに言いました。
すると、Hは私にこう言ったのです。
「ねえ、アイコって誰?」
私は怒りも混ざった感情で、Hに言おうとしました。昔あんなに可愛がっていて、家出をしてしまった時はあんなに泣いた、愛猫のアイコのことを……
しかし。
「あれ、猫……だよ。飼っていた、家出した……」
「ねえ、あんた猫なんて飼ったことないじゃない。どうしちゃったの? あんたが買ってたのは犬で、名前だってチョコとあずきって、食べ物だったじゃない。どうして急にアイコなんて猫が出てくるのよ、気味が悪いよ……」
怖がりなHは、泣きそうになっていました。それからHは私の腕を絶対に離さず、そのままバス停に向かいました。
思い返せば、アイコなんて猫、飼ったことはありませんでした。しかしあの時の私には、迷子になった縞模様の愛猫が見えていたのです。今となっては、交通事故に遭った少女が猫に化けて私を一緒に……? なんて想像をすることしかできません。そんな少女が居たかも、私は知らないのに。
怖がりなHに、あの時の話はタブーになっています。皆さんも、衝動で飛び出すのにはお気を付けて……。
子供と女と猫が飛び出す理由がわかったような気がします。