これは私がまだ小学校低学年だった頃の話です。
当時、おとなしめな性格だった私は、亡くなった愛犬の悲しみに暮れていました。拾い犬だったけれど、愛情を込めて育てた最高の相棒がいなくなった瞬間は、子供の心にはあまりに酷な出来事でした。
そんな私を気遣ってか、あるいは単に遊び相手が欲しかっただけなのか、ジュンという同級生がよく私を誘い出してくれました。彼は自らを「冒険家」と呼び、普通の小学生なら怖がるような廃屋や屋根裏に踏み込んでは、珍しい物を探しました。戦前の古い硬貨や、精巧だがどこか不気味な市松人形など、そこには日常から切り離されたような物がよく転がっていました。
あれは八月の中旬、街全体が陽炎に揺れるお盆の頃でした。
じゅんが「あの裏路地に行こう」と言い出しました。
そこは、彼が最近見つけて「まだ誰も手をつけていない宝がある」と自慢していた場所でした。
私は裏路地に対して、暗くて狭くて埃っぽい、嫌な印象しかありませんでした。できれば行きたくなかったのですが、当時唯一の友達だったじゅんと仲が悪くなることを恐れて、渋々ついていくことにしました。
学校の帰り道、そのまま裏路地へ向かいました。
途中まで見覚えのあった景色も、進むごとに新たな、そして歪な顔を見せてくれます。左右の塀が妙に高く、空が細く切り取られたような感覚。これが冒険の醍醐味だとじゅんは昂ぶり、少しずつ私もその狂気に毒されていったのだと思います。
しかし、その路地の入り口に着いた時、私は明確な「拒絶」を感じました。
これまで巡ってきたどの廃墟よりも、冷たく、重い空気が足元から這い上がってきます。そんな私をよそに、彼は手伝いのご褒美に買ってもらったという大きな懐中電灯と、戦利品を包むための風呂敷を握りしめ、今にも踏み込もうとしていました。
「ここは変な感じがする。絶対に行かない方がいい」
私は珍しく、じゅんに強く反対しました。
じゅんは、反抗などしたことのない私を初めて見るような目でこちらを射抜きました。その目は、どこか焦点が合っていないようにも見えました。
「……だって、あそこにあるんだよ。お前が一番欲しがってるものが、落ちてるって確信があるんだ」
彼はそう言い残し、私の腕を振り払って片足を踏み入れようとした、その瞬間でした。
――ワンッ!
鋭い犬の鳴き声が、路地の奥から響き渡りました。
私たちは飛び上がり、辺りを見渡しましたが、犬の姿はどこにもありません。
さすがのじゅんも顔をこわばらせ、二人で脱兎のごとく逃げ帰りました。
翌日、学校でじゅんに昨日のことを問い詰めました。
「なんであそこまでして入ろうとしたの? 僕が欲しがってるものって何?」
すると、じゅんは不思議そうな顔をしてこう言ったのです。
「……え? 宝探しだよ。あそこに行けば、『すごい価値のある古銭』が見つかる気がしたんだ。お前、古銭欲しがってたろ?」
「そんなの欲しがってないよ。そんなこと言ったことないよ。……じゃあ、なんで昨日はあんなに急いで帰ったの? 犬が怖かったから?」
「犬? そんなの聞いてないよ。奥から『チッ、チッ』って、誰かが舌打ちする音が聞こえたんだ。それも、何人もが同時に。それで怖くなって、我に返ったっていうか」


























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