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不思議体験

肺魚800さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

竹に石
短編 2026/02/25 15:07 64view

 大内さんは、大学で竹林の生態系について研究していた。

 東北のとある竹林の調査中、食事休憩を取ろうと、林内の平場にあった大きめの石に腰掛けた。

 「何してんだ!降りろ!」背後から浴びせられた怒声にギョッとしつつ振り返ると、見知らぬ老人が大内さんを睨みつけている。

 言われたことがわからずにいると、再度

「どけ!」と怒鳴られ、言う通りにする。

「墓石にケツ乗せるバカがどこいる!」

 そう言われ石をよく見ると、ところどころに文字の堀跡のようなものが、わずかにあるような気もする。墓石と言われてようやくそう見える程度だが、えらいことをしてしまったと、石に向かって頭を下げる。

 老人にも謝罪すると、ようやく溜飲を下げてくれたらしく、しばらく立ち話をした。

曰く、これは隠れキリシタンの墓石である。キリスト教への弾圧は西日本の方が有名だが、この東北でも行われており、この村でも苛烈な弾圧の末に数名が亡くなった記録がある。

 老人の家系では代々、お墓の管理をすることを引き継がれており、年に数度はお墓まで続く山道の刈払いを行っているという。

 その後、高齢化や後継者不足、どこの村でも聞かれる愚痴に暫く相槌を打ったのち、お昼を食べ終えて調査を始めた。

「あとは頼んだぞー」

 話し相手になってもらい、すっかり機嫌の良くなった老人のよくわからない別れの挨拶に、笑って手をふり返す。

 調査後、山の所有者である老婆に挨拶し、改めて非礼を詫びた。すると老婆は、そんな墓石に心当たりはないという。また、隠れキリシタンの話もそんな墓守の風習も聞いたことがない。そんな爺さんにも心当たりがない、と怪訝な顔をする。

 後日、大内さんが竹林に戻るが、探せども探せども墓石は見当たらなかった。目印にと至る所に結んでいたピンクテープはあるが、墓石も、墓石が寂しく佇んでいた平場も見当たらない。

 その後も数年間竹林に通ったが、ついぞその墓石には辿り着くことはなかった。あの老人にも会えずじまいである。

 そして今になって思い返せば、老人が男性だったのか女性だったのか、それすらも覚えていないそうだ。

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