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呪い・祟り

はちさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

足りない
短編 2026/01/03 21:12 549view

この世には、決して開けてはならない帳面と、座ってはならない椅子があるらしい。
人の一生を左右する「合格」という二文字も、その一つだ。

三者面談で教師は言った。
「今のままでは無理です。一つ下の学校に――」
母親は首を横に振った。
「あの子は、日本一の大学でなければ意味がないのです」

その夜、母親は町外れの廃屋を訪ねた。
そこにいたのは、額に小さな角を生やした「鬼ジジイ」だった。

「日本一の大学に、息子を合格させてほしい」

鬼ジジイはしゃがれ声で笑い、黒いカラスを呼んだ。

「三面大天満宮の大神様に聞いてこい。席があるかどうかをな」

戻ったカラスは首を振った。
「帳面は閉じられている」

「お願いします」
母親は土下座した。
「誰かを落とすことになるぞ」
「構いません。うちの子の方が価値があります」

再びカラスが飛び、鬼ジジイは言った。
「奉納が要るそうだ。金額は決まっていない。誠意を見せろとな」

母親は三面大天満宮へ三百万円を持って行った。

裏口に通されたが、大神様は「お会いにならない」。

次は一千万円。
答えは同じだった。

三度目に鬼ジジイを訪ねると、母親は泣き崩れた。
「もう何もありません。でも、合格だけは……」

最後のカラスが戻り、鬼ジジイは肩をすくめた。
「『もうよい。席は空けた』そうだ」

半月後、日本一の大学の掲示板に、息子の番号があった。

母親は叫びながら部屋へ飛び込んだ。
「合格よ!」

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