これは、今でも思い出すたび背中が冷たくなる、数年前の話です。
高校二年生の秋。
私立校だった私の高校は、修学旅行を国内ではなくグアムで実施していました。
その旅の最後の夜、三人部屋の薄暗いホテルで、私たちは深夜の「怪談会」を始めました。
カーテン越しの微かな街灯の光だけを頼りに、順番に話していく――ただそれだけの遊びでした。
私が金縛りの体験を話し、友人Aが“床下のノック音”の話をしたあと、
最後に口を開いたのが友人Bでした。
「怖い話じゃないけど、ちょっと……奇妙な話がある」
そう前置きして、彼はゆっくり話し始めました。
友人Bの地元は、私たちの学校から車で一時間半ほど離れた田舎で、周囲には
古い神社や祠がいくつも点在しているそうです。
散歩の途中で参拝したり、落ち葉を掃いたり、地蔵を水で洗ってやったり――
彼はそのあたりを日課のように世話していると話しました。
しかし、奇妙なのはそこからでした。
「……たまに、どうしても行けない神社があるんだ」
方向音痴ではない。
Googleマップにもはっきり表示される。レビューや写真もある。
地元の人なら誰でも場所を知っている。
それなのに、どれだけ歩いても、曲がる道を何度確かめても、その神社にだけは辿り着けない。
「近づこうとするとさ、急にスマホの電波が消えたり、勝手にカメラ開いたり、電源落ちたり……なんか、入るのを嫌がられてるみたいで。他にもそこの場所にはいける…けど超常現象が起きる場所があるんだ」
心霊現象といえばそう聞こえる話だった。
ただ、彼はそのあと、不思議な表情で続けた。
「ある時、大きな神社の神主さんと話す機会があってさ」
「その神主さんに、お前さんには“守り”がついてるって言われた。邪(よこしま)なものが
寄らんように、神様が遠ざけてるんだって」
静かに語ったその言葉が、妙に部屋の空気に馴染んで、私たち三人は言葉を失った。
……今思えば、この時点で気づくべきだったのかもしれません。
「――終わり」
彼が締めたあと、誰が一番怖かったかを茶化し合い、軽く笑う空気になった時です。
「……え?」























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