朱実が玄関の呼び鈴で目を覚まされた時、すでに午後9時になろうとしていた。
彼女は待ちわびていた。
というのは配達指定の時間の9時に近付いているというのに、なかなか配達員が来なかったからだ。
あわててソファーから降りると、玄関口まで走る。
こんにちは、○○運送です
「は、、はい!」
言いながら朱実はいそいそと玄関ドアを開く。
ジャスト9時だ。
だが何故か目の前には配達員の姿がない。
え?
彼女は訝しげに思いながら一歩踏み出し、右側に視線をやった。
ヒタヒタという足音とともに、薄暗い渡り廊下を配達員の背中が溶け込んでいくのが見える。
ただその歩き方はどこか不自然で、足の不自由な人のように感じた。
玄関の前の廊下には、30センチ角くらいの段ボール箱がちょこんとある。
彼女は荷物を取り上げると、室内に戻った。
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今年30になる独身の朱実は、よくネット通販を利用する。
商品のバラエティーの多さは当然として、とにかくその便利さが魅力なのだ。
特に朱実のような仕事で帰りが遅くなる者にとっては。
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