社会人二年目の、夏の終わりの話です。
仕事にも多少慣れて、一人暮らしも落ち着き、
それなりに充実した生活を送っていた私ですが、
未だ達成されないある種の夢を、ずっと抱いていました。
心霊体験をしたい。
私は昔から、一度として幽霊を見たことも、その存在を感じたこともなかったのです。
なんでそんな夢を、と思われるかもしれませんが、幼少期からホラー映画を愛好し、
オバケという概念に魅力を感じていた私からしたら、それは大きな目標であったのです。
オンラインのコミュニティには、興味深いものが沢山あります。
当時の私が目をつけたのは、廃墟探索を目的とした集まりでした。
加入してからしばらく経ち、九州某県にある廃村の探索会に参加することになりました。
曰く、そこでは自分の死に気づかず生活を続ける霊がいるとか、
負のエネルギーの吹き溜まりになっているために、足を踏み入れると気が触れるとか。
どれもこれも眉唾な噂話ではありましたが、
私が有給休暇を取って参加するには、十分なロマンがあったのです。
当日、集合場所である某駅には私を含めて五人が集まりました。
駅から件の廃村までは車で三十分ほどの距離であるため、
私は買ったばかりのバイクで、他の皆は立案者のTのバンに乗り込んで出発しました。
山奥にある廃村に近づくほど、霊感なんてものはこれっぽっちもない私ですら、
溢れんばかりの雰囲気に、ハンドルを握る手が汗ばんでいくのを感じました。
車で進めるところまでは進み、そこからは徒歩で向かうことに。
日が暮れていたとはいえまだまだ暑さがまとわりつき、
湿った空気と虫の声が離れてくれません。
懐中電灯を片手に、生い茂った草を除けながら、およそ二十分ほどでしょうか。
私たちはついに、目的地に到着したのです。
それはまさに、廃村という言葉がそのまま姿を得たような有様でした。
ほとんど完全に倒壊した民家や、そこら中に散乱しているトタン、
苔まみれの石塀に、元は地蔵であったと思われる残骸が、
“それらしさ”をこれでもかと演出しており、私の胸は高鳴りました。
しばらくは各々好きに見て回っていましたが、そこにTの号令がかかりました。


























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