小学校低学年だった時のある日、家でテレビを見ていると後方から誰かに見られている様な気配を感じた。
振り返ってもそこに人の姿はなかった。気にしない様にしていたが、どうしても消えない気配に私はその気配の元を探した。
リビングを出て廊下を進む。その妙な気配は風呂場の方向から感じた。
恐怖心よりもその気配が何なのか確かめたいと言う好奇心の方が優り、躊躇う事なく脱衣所を覗いた。
そこにはいつもと変わらない普段通りの風景が広がっていた。気のせいか。背を向け戻ろうとするがやはり何か嫌な気配を感じる。脱衣所に背中を向けた時からその気配は強くなり脱衣所に引っ張り込まれそうな違和感を感じた。
パチッパチッ。謎の音が鳴り始めた。その音のする方へと目を向けると風呂場の照明のスイッチがオンオフを繰り返していた。
すぐにでもこの場から逃げ出したいが足が動かない。恐ろしい何かに見つめられている様な恐怖と緊張感で体が動かない。
パチッパチッと一定間隔で鳴り響く脱衣所で動く事が出来なくなった私は、ただひたすら何かがいなくなる事を願った。ふと脱衣所の右隅に違和感を感じ視線を移すとそこには白いモヤのような塊が浮いていた。
雲の様に白く丸みを帯びた「それ」は少しだけ左右に揺れるとゆっくりと収縮し形を成し始めた。
人型へと形成されていく「それ」が白い着物を着た白髪の老婆だと認識した瞬間、私は叫び声を上げ飛び出そうとしたが、それより早くその老婆の様なモヤが私の体に覆いかぶさってきた。その瞬間、誰かに腕を掴まれ勢いよく体が後方へと引っ張られた。私の叫び声を聞いたのか母が私の腕を掴み脱衣所から引っ張り出してくれた。
突然の事に私は驚き母の顔を見た。その顔は今まで見たことの無い焦りとも恐怖とも取れる必死な形相で脱衣所を睨み、私を腕を掴んだまま無言でリビングまで連れ戻された。
その後母は何も言わなかったが母にも何か見えていたのは間違いない。
























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