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ヒトコワ

太山みせるさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

後悔
短編 2025/02/22 00:22 1,779view
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翔子さんには子供が2人いた。
長男の篤(あつし)くんと、2才下の次男の剛(つよし)くんだ。
篤くんは健康で元気だったが、剛くんは持病もあって病弱だった。
医者からは、あまり長くは生きられないとすら言われてしまった。

翔子さんの旦那さんは、給料の高いサラリーマンだから、剛くんの体の為に、お金はたくさんかけることができた。

旦那さんは平日は遅くまで働き、休日は接待でゴルフによくいっていた。
だから、普段は翔子さんが1人で子供たちを見ていた。

剛くんがすぐ熱を出すので、どうしても剛くんにばかり手が掛かってしまう。
篤くんは、相当寂しかったのではないか、と翔子さんは後に言っている。

篤くんは優しくてしっかりしていた。

頭も良くて、教えると何でもすぐに覚えた。
剛くんに手が掛かる時は、篤くんは1人で勉強をしていたり、お母さんのお手伝いをやってくれた。

だからか翔子さんは、篤くんを少しくらいは放っておいても大丈夫と思ったらしい。

剛くんが小学5年生の時だった。
真夜中に突然高熱をだして、救急車で病院に運ばれたのだ。
そのまま入院となり、医師の見立てだと かなり危なく、もって3日と言われてしまった。

家族は焦った。どうしても助かって欲しい!
旦那さんも会社を休んでくれて、家族で剛くんに付き添って病院で寝泊まりをすることになった。
篤くんだけは、学校の時間は登校した。

3日目の朝、篤くんが学校に行く時に両親に、「行ってきます」

と、いつも通りの挨拶をした。

その日は特に剛くんの容態が悪く、篤くんの挨拶は聞こえたが、両親はそれどころではなく、彼を無視してしまった。
篤くんは小さくもう一度、「行って来ます」と独り言のように呟いて出ていった。

翔子さんは篤くんに、心の隅では申し訳ないと思いながら、剛くんのことで目一杯だったのである。
(篤は剛と違ってしっかりしているから、あとでフォローすれば大丈夫だろう)
と、考えていたという。

しかし、篤くんは学校に行く前に、その病院に戻されたのだ。
猛スピードの飲酒運転のトラックに轢かれ、亡くなってしまった。

翔子さんは唖然とした。
(篤は元気なのに……。剛は早く亡くなる可能性があるから、そうならないように優先してきたのに。篤が先に亡くなるなんて……)

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コメント(3)
  • 篤君は自ら魂になって、剛君に入り込んで助けてくれたのかも知れないですね。

    2025/02/22/10:40
  • 怖い話というよりいい話、さみしい話ですね

    2025/02/23/07:32
  • いい話

    2025/02/23/07:32

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